株式レポート
2月24日 18時0分
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アベノミクスへの側面支援〜G20声明の成長目標〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

先週末にG20(財務相・中銀総裁会議)が開催された。ドル相場が政治的な要因で左右された1990年代半ばまでのように、G7(やG20)の声明が為替市場などに大きく影響を及ぼすケースは最近かなり少なくなっている。今回のG20も同様で、目先の為替市場などに直接及ぼす影響は限られるだろう。

一方、今回のG20では、「各国で今後5年で成長率を2%底上げ」する数字目標が明記された。G20で掲げられた目標については、実際に数字に拘束力はないし、「どこまで具体的な政策協調を実現していけるかはまだ不透明」(日経新聞)と懐疑的な見方が一般的の様だ。また、米国と議長国のオーストラリアが主導したとされる数値目標について、目標設定に慎重だった国(ドイツなど)と駆け引きがあったと報じられるなど、各国が抱える政治事情や思惑も存在したのだろう。

ただ、今回のG20声明で成長率目標が設定されたことには、各国政府が経済状況をどう認識しているか考える上で一定の意味を持つ。日本以外の主要国では過去2年インフレ率が低下傾向にあり、世界的に成長率も減速している。このため、財政健全化(これまでのG7などで重視されていた)よりも、とりあえず成長率を高めることが最優先の課題とされたのは自然である。具体的には、「均衡ある経済成長の達成には程遠い」「需要の弱さに直面」「十分な雇用を提供する成長率を下回っている」と声明文で明記されている。

欧州では債務問題の深刻化で、2011〜12年に南欧諸国が強烈な緊縮財政政策を余儀なくされ、更に事態が悪化した。この教訓を踏まえ、「金融・財政政策で経済安定化(十分な成長)を図ることが必要」というのが、2012年頃からIMFなどの主流な見解になった。2013年に発動されたアベノミクスは、自国の経済安定のために金融・財政政策をフル回転させる政策だが、ほとんどの正統派の経済学者に加えて、多くの国から賛同を得た一つの理由は、成長底上げが最優先であるとの各国の認識があった。

つまり、今回のG20での成長率目標設定は、「低成長が問題」「成長率を高めることが必要」と、多くの国が、2年前からの認識を依然共有していることを意味する。「需要の弱さ」が問題なら、特に経常黒字国(国内需要停滞で貯蓄余剰状態ある)であるドイツや中国が、世界の経済成長率を底上のために国内需要拡大を図る余地が大きいということになる。一方、アベノミクスによる国内需要復調で経常黒字が縮小している日本に対する風当たりは、ドイツなどと比べると大きくない。2月20日レポートで紹介したが、「貿易赤字の拡大はアベノミクスの失敗を示している」などは的外れで、むしろ金融緩和強化で国内需要を回復させたアベノミクスは望ましい政策という位置づけになる。

そして、どのように成長率を2%引き上げるかは、各国の経済状態や経済構造によって異なる。G20の声明文では、「マクロ経済政策に加え、投資拡大、雇用と労働参加引き上げ、貿易と競争の促進」が列記されている。

デフレ克服の過程にある日本の場合は、「民間投資・雇用の拡大」はデフレ解消の過程で実現する余地が大きいので、景気拡張的な金融・財政政策の継続(第1,2の矢)が求められる政策になる。また、「貿易と競争の促進」の具体策は、TPP参加を通じた関税縮小、不要な国内規制の見直しになる。そして、特定業界にのみ恩恵をもたらす「成長戦略という名の産業政策」は、G20声明には含まれていない。

なお本日(2/24)の日経新聞では、「労働市場改革、財政改革、インフラ投資」が、成長引き上げの具体策として紹介されている。先に説明したとおり、デフレ克服の途上にある日本の場合、声明文にもある金融・財政政策が他国より重要なのだが、そうした視点は紹介されていない。

また、今回の声明文について「適切なタイミングで金融政策の正常化が必要」という点が強調されているが、一方「多くの先進国において金融政策は引き続き緩和的である必要」と明言されている。繰り返しになるが、成長率を引き上げるために必要な政策は各国で異なるので、日本そしてデフレリスクに直面する南欧諸国については、他国よりも金融政策の強いサポートが必要になる。

こうした意味では、成長率目標を掲げた今回のG20声明は、アベノミクスの第1,2,3の矢をいずれも側面支援している、と位置づけることができる。1月半ばから日本株が下落したせいか、的外れなアベノミクス批判が国内識者や海外メディアから増えているが、主要国の経済政策についての現在の考え方とは相いれない。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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