経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第51回】 2014年3月4日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【松田修一氏×武田隆氏対談】(前編)
ホンダ、ソ二ー…世界的ベンチャーが生まれた国日本
置き去りにされたベンチャー遺伝子を呼び覚ますには

日本でこれまで開業率が一番高かったのはいつだか、ご存じだろうか? 答えは「終戦直後」。最近ではスタートアップという言葉もすっかり定着し、日本でも元気なベンチャー企業が数を増やしつつある印象だが、第二次世界大戦終結の直後のほうがはるかに開業率は高かったのだという。
なるほどたしかに、いまや日本を代表する大企業となった本田技研工業やソニーも、もとはベンチャーだった。だが「その遺伝子がどこかに置き去りにされてしまっているのでは」と危惧するのは、長年にわたりベンチャー企業の成長支援をされてきた松田修一氏。今回から3回にわたり、氏との対話を通して「ベンチャー企業」というものを考えていく。

実はよく知らない「ベンチャー企業」の定義とは

武田 松田先生は元日本ベンチャー学会会長で、現在は、エンジェル・ファンド「ウエルインベストメント」の取締役会長でいらっしゃいます。ずっとベンチャー企業やベンチャーキャピタルの成長支援をされてきた松田先生が、ベンチャーに興味を持たれたのは何がきっかけだったのでしょうか?

松田修一(まつだ・しゅういち)早稲田大学名誉教授・商学博士。昭和18年10月1日生まれ。1966年9月公認会計士試験2次試験合格、1972年3月早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。1973年12月監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入社、社員として中堅・ベンチャー企業のコンサルティングに従事。1985年3月「独立第三者による経営監査の研究」にて商学博士(早稲田大学)、1986年4月早稲田大学アジア太平洋研究センター助教授、1991年4月同センター教授に就任。1998年4月早稲田大学大学院(MBA)教授に就任。2007年4月早稲田大学大学院商学研究科(ビジネス専攻)教授に就任。2012年3月早期退職、名誉教授。現在、早大アントレプレヌール研究会代表理事、ウエルインベストメント株式会社取締役会長を含む6社の社外役員、日本ニュービジネス協議会連合会副会長。元日本ベンチャー学会会長。経済産業省・財務省・文部科学省・総務省などの審議会・委員会委員などを歴任。『ビジネスゼミナール会社の読み方』(日本経済新聞出版社)『ベンチャー企業』(日経文庫)『日本のイノベーション123』(白桃書房)等著書・論文多数。

松田 私は大学生のときに会計士の資格をとり、会計監査のアルバイトをしながら博士課程を修了したあと、監査法人サンワ事務所(現トーマツ)に入所したんです。

武田 会計士からキャリアをスタートされたのですね。

松田 はい。そこで、いろいろな上場企業の会計監査をしているうちに、決算書の内容を良くするためには、企業活動自体を改善しないといけないと思うようになりました。

武田 それはいつ頃のことでしょうか?

松田 僕が入所したのは1973年。その年末には、第一次石油ショックで、産業構造の変化が起こり、新興企業であるハイテクベンチャー企業が次々とつぶれていきました。監査法人では1985年まで、戦後生まれのベンチャー企業再生のための経営監査に従事していました。

武田 そもそも、ベンチャーという言葉が日本に入ってきたのはいつ頃のことだったのでしょうか。

松田 入ってきたというか、「ベンチャービジネス」という言葉は日本でつくられたんですよ。

 1971年に出版された『ベンチャー・ビジネス 頭脳を売る小さな大企業』(清成忠男・中村秀一郎・平尾光司共著)という本で、ベンチャービジネスとは何かが具体的に定義づけされました。当時アメリカにハイテクベンチャーの視察に行かれたところ、将来成長する可能性のあるスモールビジネスに投資する企業が「ベンチャーキャピタル」と呼ばれていたんですね。その投資先はスモールビジネスだったり、ニューベンチャーだったりといろいろな呼び方がされていた。そこで、キャピタルの投資先を総称して「ベンチャービジネス」という言葉を初めてつくり、世界的に使われるようになったのです。

武田 著者のひとりである法政大学の清成忠男先生には、さまざまなベンチャー関連の書籍で学ばせていただきましたが、「ベンチャービジネス」の名付け親でもいらっしゃったんですね。最近では「スタートアップ」「リーン・スタートアップ」という言葉も、ベンチャーと同じように使われることがあります。

松田 そうですね。スタートアップというのは、厳密に言うとベンチャー企業の成長の最初のステージのことを指します。起業準備をしている「シード期」の次にくる、実際起業して製品やサービスの販売を開始し、事業が軌道に乗るまでの間を「スタートアップ期」と呼ぶんです。また、最近コストをかけずにPDCAサイクルを短期的に繰り返して起業することをリーン・スタートアップと言っています。

武田 なるほど。

松田 でも、ベンチャー企業の定義というのは非常に難しいのです。時代によって変わることもあります。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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