株式レポート
2月26日 18時0分
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過去を振り返らずに前を見よう - 広木隆「ストラテジーレポート」

PAST(過去)よりFUTURE(未来)

自分自身でも「よくできた」と思うレポートのひとつが、アベノミクス相場が始まる直前の 2012 年秋に書いた「PAST<FUTURE」である。

<現在の日本株式市場は極端な弱気と悲観論に支配されており、見方があまりにも短視眼的過ぎるように思える。(中略) 80 年代バブルをやり過ぎたために、その後長きに渡るバリュエーション調整が必要だった。それが日本経済、日本株の「失われた 20年」だった。この長期停滞が「日本株離れ」を招いた。成功体験が誰にもなく、日本株は儲からない資産の代表格になった。それが現在の投資家不在の状況を生んでいる。市場に投資家がいない。だから見方が一方に偏ったまま、それを是正・修正する動きが入らない。

市場に関わる者にとって、市場は常に正しい。それは黄金律である。しかし、あえて云う。ここまで歪んだ日本株式市場は間違っていると>(2012 年 10 月 10 日付レポート「PAST<FUTURE」)

理不尽としか言いようのない日本株式市場の低迷ぶりを嘆き、後で振り返れば相場の底を捉えることになった記念碑的レポートであると前回 も書いた。僕の相場の見方がここに凝縮されている。すなわち、

・ 日本株式市場は投資家層の厚みが薄いため、「一方通行相場」になりやすい。
・ それが常に市場がオーバーシュートする(行き過ぎる)根本的な背景である。
・ オーバーシュートすることの、もうひとつの理由は、市場参加者の見方が短視眼的であり、先行きの変化を見過ごしがちであるからだ。逆に言えば、短期の投機筋しか市場に参加していないということの表れでもある。
・ だからこそ、我々の勝機はそこにある。短期筋が見落としがちな、先行きのファンダメンタルズをしっかりと把握して、市場が行き過ぎたところを捉えるのである。
・ オーバーシュートというのは、言い換えれば割安(割高)にまで売られた(買われた)状態のことだから、そこは大きな投資チャンスである。

この考え方を金科玉条としてきた。だから、年明けから続いた今回の下落相場でも、突っ込んだところは買いであると繰り返してきた。

2月3日付「市場は常に行き過ぎる」 では、日本株は売られ過ぎと指摘しオーバーシュートは絶好の投資チャンスだと述べた。売られ過ぎと判断した根拠は、「企業の 7 割 増収増益」という記事が日経新聞の1面トップを飾る状況でありながら、その好業績を評価せずに「新興国不安」という掴みどころのない「獏とした不安」に振り回されていたからだ。そして、その新興国不安の収束の仕方として、こう指摘した。

<もうひとつの収束の経路は、この新興国の通貨安に先進国市場が振り回されなくなることである。新興国不安が後退して先進国市場が落ち着く - のではない。順序が逆である。逆説的な言い方になるが、先進国の株式市場が落ち着くことで新興国不安が後退する。なぜなら、今起きている新興国通貨安は、年初からの先進国市場の調整ムード(=リスクオフの地合い)を利用した投機だからである。リスクオフ・ムードが支配的な相場環境では「弱い者いじめ」がうまく機能する。不安心理の増幅で「同調者」が現れるからだ。ところが先進国の経済や市場が明るさを取り戻すと、重箱の隅をつつくような投機売りはもう注目されなくなる>

欧米株式市場がほぼ高値圏に迫る水準にまで回復した今となっては、新興国不安などは影を潜めている。不安は常にあるだろう。だが、その不安が世界の株式市場を揺るがすようなリスクとしては捉えられなくなった。まさに僕の指摘の通りの展開となっている。

2月4日には「市場は常に行き過ぎる PART2」を書いた。この日の前日、米国株式市場でISM製造業景況感指数の下振れを受けてダウ平均が300ドルを超える下げとなったが、それについて「寒波の要因以外に何があるか」と切り捨てた。それ以降、米国株はどんな悪い指標が出ても、ビクともしなくなり、ついに年初からの下げをほぼ埋め戻す水準に戻ったのである。
そのレポートでも同じことを繰り返した。
<日経平均 1 万 4000 円という水準は、昨年 5 月に高値をつけて直後に急落、それ以降半年にわたって調整してきた三角保ち合いの中心レンジである。その保ち合いを昨年 11 月、米国雇用統計の改善を受けた上昇で上放れたはずだった。そこに戻るということは、昨年 11 月以降のファンダメンタルズや市場の見方をすべて否定するということである。

現在の水準を正当化する市場関係者がいたら、その者は昨年 11 月以降のコメントをすべて撤回するということだ。

僕はしない。何度でも言う。こんな水準の相場は間違っている>

間違っていたのは相場のほうであり、正しかったのは僕のほうだ。ここまで自画自賛する人間も珍しいって?僕はそういう人間である。覚えておいてほしい。

リスク・イベントが目白押し

益嶋 「広木さん」

「なんだよ?」

益嶋 「『過去を振り返らずに前を見よう』とかなんとか言っておいて、今日のレポート、ここまでのところ、全部、過去の振り返りじゃないですか!」

「だって、しょうがないじゃん。俺が言った通りになってんだから。ここで自慢しなかったら、いつ、どこで自慢するんだよ」

益嶋 「別に自慢なんかしなくてもいいじゃないですか。予想なんて当たったり外れたりするんだから。安岡正篤先生は『得意澹然、失意泰然』とおっしゃっています。得意なときほど淡々とあっさりして、失意のときほど泰然自若と構えるのがよろしい、という意味です。ちょっと相場が当たったくらいで、はしゃぐのはみっともないですよ」

「うるさーい!俺は俺の書きたいことを俺のスタイルで書くんだって、この前のレポートでも宣言して、読者からもいっぱいお便りがきて、『広木さんの思う通りにして下さい』ってみんな、言ってくれてるんだ。お前が、ツベコベ言うことはないんだよ、バカ野郎!」(いままでなら「ハゲ野郎!」と言っていたのだが、『全国1000万人のハゲを敵に回すつもりか!』と脅しがきたので、これからは「バカ野郎!」にする次第である。)

益嶋 「なら、もう言いませんけどね。でもね、前を見たら、そんなに安心していられないんじゃないですか?」

「どういう意味だよ?」

益嶋 「リスク・イベントが目白押しなんですよ。円高に巻き戻る懸念が…」

「大丈夫、大丈夫、3月10-11日の金融政策決定会合で日銀が追加緩和してくれるから、そこで一気に株高になるさ」

益嶋 「え?この3月に追加緩和ですって?何を根拠にそんなこと言うんですか?」

「日経平均の一目均衡表を見るとさ、この雲がねじれてんのが分かるだろう。この雲のねじれが、ちょうど3月11日なんだよ」



益嶋 「それで?」

「だから〜。そこで日銀の追加緩和があれば、上値抵抗帯がちょうど途切れているから、その間隙を縫って、一気に大幅高になるって寸法さ。黒田さんも、このチャートを見て追加緩和を決めると思うね」
益嶋 「そんなバカな…」

「じゃあ、お前が言う、リスク・イベント目白押しってのは何のことだよ?」

益嶋 「まず今週末に消費者物価指数の発表があります。これまでは円安効果で物価上昇が続いてきたけど、さすがにそろそろ頭打ちになるかもしれません。これまで順調にインフレ方向に動いてきただけに、その流れが止まるとなれば円高に戻る圧力が高まる懸念があります。

来週初めには米国でISM製造業景況感指数の発表があります。前回はこれが下振れしてダウ平均が300ドル安。それが日本株暴落のきっかけとなっただけに今回も警戒されています。

そして6日は欧州中央銀行の理事会。利下げ観測が根強いですが、なかにはマイナス金利を取沙汰する声まであります。ドラギ総裁が思い切った緩和策を打ちだした場合、ユーロ安のクロス円経由で円高となるシナリオもじゅうぶんあります。

そしてトドメは7日の米国雇用統計。過去2回とも大幅に下振れてますからね。今度もだめだったら、『3度目の正直』で強烈にドル安円高になるんじゃないでしょうか」

「願ったり叶ったりじゃねえか」

益嶋 「え?円高が、ですか?」

「ああ。そうなればそれが日銀の背中を押す。11日の追加緩和で決まりだよ。政府・日銀にとってもありがたいだろう。消費税増税前に手が打てるんだから。

まあ、もっとも、その逆もあり得るだろう。益嶋が挙げたのは全部、ネガティブ・シナリオじゃないか。どうして、お前はそういうふうにものごとを悪いほうに悪いほうに考えるんだ?そんなことだからハゲとか言われるんだぞ」

益嶋 「ハゲよばわりしてるのは広木さんだけじゃないですか!」

「米国の景気指標が悪いのは天候要因が大きい。そろそろその影響も剥がれ落ちてくるかもしれない。悪い指標が続いたあとだけに、今度はまっとうな指標がでれば、『ほーら、やっぱり、米国経済は大丈夫』ってことになって、米国株高・ドル高もあるだろう。どっちにしろ、一目均衡の雲のねじれを突いて…」

益嶋 「何がなんでも、一目均衡表の雲のねじれにこじつけたいだけなんでしょ!」

前を見よう、先を見よう

2月14日付「It’s a Sony 傷ついたブランド」では、「ふりむくな ふりむくな 後ろには夢がない」という寺山修司の言葉を引用した。破綻したコンチネンタル航空を奇跡の復活へと導いた経営者、ゴードン・ベスーンの、「過ぎ去った滑走路をふり返るな、コックピットにバックミラーはない」.という言葉も紹介した。

過去のレポートでも多くの名言を引用してきた。例えば、「悲観主義者はすべての好機の中に困難をみつけるが、楽観主義者はすべての困難の中に好機を見いだす」(ウィンストン・チャーチル) 「悲観主義は気分だが、楽観主義は意志である」(アラン)などである。極めつけはこれだ。「下を向いて歩いていたら、小銭はいっぱい拾えるかもしれん。だけど、本気で何者かになるつもりなら、眼の照準はちゃんと眼の高さに据えておくことだ」(ボストン・テラン著『暴力の教義』)

マーケットが短視眼的だというのは、特に例年、この時期にこそ、その感を強くする。なぜなら、マーケットはいつも「今期」の業績しか見ていないからだ。米国の市場関係者や日本でも機関投資家は、12 month-forward EPS (12カ月先1株当たり利益)などを見ているのが普通だが、なぜか日経新聞に載る相場コメントで使われる業績やバリュエーションの話は、いつまでたっても「今期」である。

もうあと1カ月で「今期」も終わりだ。当然のように、「来期」業績をベースに語るべきだろう。クィック・コンセンサスをもとに、日経平均の来期予想EPSをはじくと1,100円である。これも数か月前からまったく変わっていない。一方、今期予想EPSは足元で1,044円まで上昇している。来期の増益率はわずか5%程度である。これはいくらなんでも保守的過ぎるようにも思えるが、企業側の感覚とかなり近いと言える。
日本経済新聞社が主要企業の最高財務責任者(CFO)を対象に実施した調査では、来期の業績見通しについて、全体の57%が「上向く」と回答した(21日付朝刊1面トップ)。このうち3分の1が、1〜3割の増益率を見込んでいる。今期と比べて「横ばい」とする回答は23%。「悪化」は6%。無回答が14%いるからそれを調整しよう。「上向く」が66%(57%÷0.86、以下同様)、「横ばい」は27%。「悪化」は7%で合計100%だ。

「上向く」と回答したうち3分の1が、1〜3割の増益率を見込んでいる。1〜3割の増益率を丸めて20%とすれば、22%が20%増益を見込み、44%がそれ以下だ。それ以下というのは「1〜3割の増益」のくくりに入らないのだから、ざっくり5%程度としようか。反対に「悪化」すると回答した企業は、10%の減益と仮定しよう。

加重平均すると5.9%増益だ。だから現在のクィック・コンセンサスの来期予想、5%増益というのはかなり企業の「肌感覚」に沿ったものだと言えるだろう。

ならば、もっとこの数字を当てにしていいのではないか。来期予想EPSをもとにバリュエーションを測ろう。米国と同水準であり、過去平均でもあり、だからこそ多くの投資家が妥当と考えるPER15倍で16,500円がフェアバリューである(1,100円×15倍)。

昨年末同様、16倍まで評価してやれば17,600円となる。

益嶋 「広木さん、それも今朝の日経に出していたコメントじゃないですか!過去のネタを使いまわして手抜きするの、やめてくださいよ!」

「うるさーい!このハ…じゃなかった、バカ、バカ、大バカ鹿野郎!」



(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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