8月19日の白川方明・日銀総裁記者会見の冒頭で、総裁が政策金利の水準を「0.50%前後」ではなく「0.75%前後」と言い間違うハプニングがあった。

 マスコミ各社の格好のネタになってしまったが、「自分自身の深層心理がそこに投影されたということはまったくない」と苦笑しながら総裁が説明しているように、深読みしても実際意味はないだろう。

 日銀は7月から金融政策決定会合後の声明文の記述を詳細にして、政策判断の根拠を市場にていねいに説明しようとしている。記者会見の言葉尻よりも、説明のロジックに着目するほうが金利運営を予想するうえでは有用と思われる。

 とはいえ、もし総裁が「0.25%前後」と言い間違っていたら、市場の一部にある利下げ観測を刺激していた可能性はあっただろう。

 日銀はこの日発表した「当面の金融政策運営」で、日本経済を「停滞している」と描写した。仮に日銀政策委員会が8月に今年度の実質成長率予想を作り直して公表していたら、7月時点よりも下方修正がなされただろう(実際の次回公表は10月末)。

 しかしながら、1990年代と異なり「設備、雇用の面で大きな調整圧力を抱えていない」「在庫も大きな調整圧力を抱えているわけではない」と総裁は説明しており、「次第に緩やかな成長経路に復していくと予想される」というメインシナリオを日銀は維持した。