誰が言ったのかではなく、何を言ったのか

 さて、こんな偉そうなことを書いている私は、単なる若手の研究者です。

 取り立てて世界に誇るような実績があるわけではありません。この先に革新的な何かを生み出す可能性は十分にある、と少なくとも私自身は信じていますが、実務でも研究でもまだまだの序の口です。

 しかしながら、研究者という仕事上、またコンサルタントや経営者という経験から、極めて優秀で実績も挙げている、まるで百戦練磨の戦国大名のような経営者の方々と何度もお会いしてきました。今の私でも、彼らの共通点については、お伝えすることができます。

 それは「誰が言ったのかではなく、何を言ったのか」を重視する姿勢です。

 1兆円規模の事業を作り上げた方や、世界的なプロフェッショナルファームを率いている方も、お会いしたその瞬間、たとえ私のような若造であっても、相手を否定することはありません。鍛えぬかれた日本刀のような、しかし、それでいて柳のようなしなやかな目で、自分の目の前にいる相手が何を話すのかに注意を払います。

 私がたいしたことを言えないときは、寛大にも私の将来の可能性を考慮して指導してくれます。逆に、彼らの心に刺さる言葉を少しでも言えるのであれば、自分の子どもと変わらない年齢のパートナーであっても、何かを学ぼうとする姿勢を持つのです。

 このような姿勢は、私だけではなく、野心あふれる極めて優秀なスタッフの方々の心をも引きつけるのでしょう。だからこそ、1人では到底運営できない数万人規模の組織で、数千億円を超える事業を成功に導くことができているように思えます。