高い専門性を生かして、
世界と地域をつなぐ

JTBグローバルマーケティング&トラベル
グローバルマーケティング部
クルーズデスク
チーフプロデューサー
鈴木貴仁

 同社が展開するビジネスの一例として、最近注目されているクルーズ旅行がある。日本の港にもクルーズ船が相次いで就航し、訪日外国人旅行者の増加につながっている。

 船が港に着くと、1度に数千人が下船して観光や買い物を行う。大きな経済効果が期待できるため、クルーズ船誘致に取り組む自治体は増えている。例えば福岡市の調査では、外国クルーズ船が09年に博多港へ24回寄港した際の同市への経済波及効果は、10億5700万円で、1寄港当たり4400万円であった。なお博多港への寄港回数は12年には85回にまで増えて、経済波及効果も大幅に拡大したと考えられる。

 JTBGMTでは、外国のクルーズ船の誘致支援や、寄港地でのオプショナルツアーの企画運営を行う。クルーズを担当する鈴木貴仁氏は説明する。

「私は自治体の港湾関係者と二人三脚で、ツアーの企画を考えたり、クルーズ船会社の担当者を招いて現地を案内したりします。他の港と組み合わせた新たな航路の提案を行うこともあります。ここ数年は日本海航路に力を入れ、誘致を支援してきました」

 誘致に成功した港では、来船時にジャズフェスティバルを開催するなど、地元の盛り上がりにもつながっている。

 もう一つの例が教育旅行だ。同社では、旅行を重要な教育の機会と捉え、各地の自治体や団体と共にプログラムを企画・運営し、海外の旅行会社に対して販売している。

 一般的な訪日観光といえば東京や京都だが、教育旅行では地方の農村などを目的地とするケースも多い。学生は、短期間の民泊や学校訪問、職業体験、ボランティア活動といった機会を通して、地域の人々と交流しながら日本を学ぶのだ。

JTBグローバルマーケティング&トラベル
グローバルマーケティング部
北米・パンパシフィック課
北米西部・ハワイ・豪州地区担当
澤井 萌

 北米市場向けの教育旅行を担当する澤井萌氏は語る。

「被災した南三陸で滞在するプログラムでは、地元の高校生が被災体験を英語で語り、米国の学生が涙したこともありました。海外の学生は日本での体験を通して人間的に成長し、日本の魅力を知ってくれます。そのときに生まれた交流は一過性のものではなく、将来にもつながっていくものと信じています」

 米国では、毎年2万人以上の学生が利用する体験・交流型教育プログラムを運営する国際交流団体が存在する。その人気投票で、JTBGMTがサポートした長崎・小値賀での体験プログラムが2年連続で世界第1位の評価を獲得した。日本の地域と世界を結ぶ、次世代につながる交流事業である。

交流による相互理解が
平和の創造につながる

海外から来た学生が短期間の民泊や職業体験、ボランティア活動を通して、地域の人々と交流しながら日本を学ぶ、教育旅行プログラム

 座間社長は自社のビジネスの意義をこう語る。

「単に手配を行うだけではなく、交流の場をつくることが私たちの仕事。訪日外国人旅行者が日本で体験した交流は、お互いの国や文化についての理解につながり、ひいては世界の平和にもつながります。これこそが、JTBが進める『交流文化事業』であるといえます」

 旅行業は平和でなければ成り立たない平和産業といわれるが、人々の交流を通じて、世界の平和に貢献している平和事業でもあるのだ。