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「引退」は誰のもの?
過熱するスポーツ引退報道に疑問あり

――選手の引退も商売にするマスコミのしたたかさ

相沢光一 [スポーツライター]
【第29回】 2008年9月16日
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 北京オリンピックが終わって3週間。出場した選手たちにも日常が戻った。

 すでに戦いを再開している選手もいる。北京では1回戦敗退に終わったテニスの錦織圭は、全米オープンで世界ランク4位のダビド・フェレールを破る快挙を成し遂げ、ベスト16に入った。ソフトボール悲願の金メダル獲得の立役者、上野由岐子投手は所属する日本リーグ1部・ルネサス高崎に戻り、オリンピック前には考えられなかった超満員の観衆の前で相変わらずの快投を見せている。

 一方で競技生活を終える選手もいる。銅メダルを獲得した陸上男子4×100mリレーのアンカーを務めた朝原宣治は、今後は後進の指導に当たることを明言。23日に川崎・等々力陸上競技場で行われるスーパー陸上がラストランになる。女子マラソンで棄権した土佐礼子も引退の意向を示した。

 また、400mハードルで予選敗退という不本意な成績に終わった為末大は、今も現役続行か引退かで悩んでいるようで、所属事務所の先輩・中田英寿と同様、自分探しの旅に出た。(旅の様子や現在の心境は為末のオフィシャルサイトで知ることができる)。スポーツ選手の人生模様もいろいろである。

北島からオグシオまで
過熱する引退報道

 ところで今大会で気になったのは、競技結果とともに大会後の選手の身の振り方に触れる報道が多かったことだ。それも目立ったのが「引退するかどうか」。2大会連続の平泳ぎ2冠を達成した北島康介をはじめ、柔道では銅メダルに終わった谷亮子と2大会連続メダル獲得を逃した鈴木桂治、バドミントンの潮田玲子など、本人が引退を明言してもいないのに「引退か」と騒がれた。

 大会後の引退が確定的だったのは朝原だけだ。昨年夏に大阪で行われた世界陸上を区切りに引退する意向を持っていたが、「1年後にオリンピックがあるのだから」と、もう一度自らを奮い立たせて現役続行。日本陸上界の悲願でもあった短距離種目のメダルを獲得した。この大会に選手生命のすべてをかけて有終の美を飾ったのだから、朝原の場合は「結果」と「引退」をセットで報じるのもいいだろう。だが、他の選手は違う。

 確かに谷は33歳、鈴木は28歳と選手としては全盛期を過ぎている。北島も他の選手には真似できない偉業を達成し、「やりきった感」を漂わせていたし、潮田にはその美貌からスポーツキャスターに転身という噂がつきまとっていた。人気選手だから「去就に注目が集まる」と考えるのも無理はない。一連の報道の中には、まるで引退は確定というニュアンスのものも。結果の報道だけでは物足りず「引退の話題でもうひと商売」という雰囲気がありありだった。

肝心の選手たちのホンネは?
自分と向き合う「時間」も必要

 選手は「オリンピック出場を区切りに引退」ということを考えるものなのだろうか。オリンピック2大会に出場経験を持つある競泳選手に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

 「私の場合、年齢的に次の大会が最後のチャンスかなと思うことはありましたが、それを区切りに引退とまでは考えていませんでした。大会後はどうしようなんて考えていたら、とてもきつい練習には耐えられませんよ。とにかく大会前は自分のベストを出すことだけ考えて、練習と調整に集中していました。北島君は去就について言葉を濁したことで引退説が出たようですが、競技に集中していてなんにも考えていなかったから答えられなかったというのがホントのところなんじゃないかな。マスコミは先読みし過ぎですよ」

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相沢光一 [スポーツライター]

1956年埼玉県生まれ。野球、サッカーはもとより、マスコミに取り上げられる機会が少ないスポーツも地道に取材。そのためオリンピックイヤーは忙しくなる。著書にはアメリカンフットボールのチーム作りを描いた『勝利者』などがある。高校スポーツの競技別・県別ランキングをデータベース化したホームページも運営。 「高校スポーツウルトラランキング」


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