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3月5日 18時0分
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アベノミクスに失望する機関投資家の悲観論 - 村上尚己「エコノミックレポート」

2月20日レポートでも紹介したが、アベノミクスに対する懐疑的な主張を、メディアで最近頻繁に見かけるようになった。先日、某機関投資家と話をする機会があったが、「アベノミクスには失望している。もう、日本株を押し上げる材料にならない」という見方が広がっていることが話題になった。

「アベノミクスに失望した」という理由は、各人で様々だろう。先日のレポートで取り上げたWSJ紙社説のように、貿易赤字拡大をネガティブに考える方もいる(妥当ではないと思うが)。また、いわゆる成長戦略の進捗が鈍いことに失望している方もいるだろう。あるいは、安倍政権の政策運営の力点が、経済以外の面にシフトしつつあることも影響しているかもしれない。

成長戦略については、TPP交渉の難航や、規制緩和の動きが滞っている、など懸念される面があるのは事実だろう。ただ、それを「アベノミクスへの失望」と捉えるのは、筆者は悲観的過ぎると考えている。アベノミクスについて様々な見方があるが、経済状況や金融市場に影響を及ぼす意味で重要な点は、「第一の矢」である金融緩和強化を起因に、脱デフレと経済正常化が進むことである。

また、4月からの消費増税で緊縮的な財政政策が始まることが、懸念の一つであるとは思う。ただ、その悪影響を乗り越え、脱デフレと経済正常化が続けば、「アベノミクスに対する失望」というのは、後から振り返れば悲観に傾いた見方だった、ということになるのではないか?

アベノミクスに対して疑念を抱く識者は、金融・財政政策によって循環的な景気回復をもたらしても、それは一時的な効果に過ぎず持続性がない、と論じているようだ。金融政策による景気刺激策は、かえって経済構造に歪みをもたらすなど副作用が大きいと言う。

そうした方々は、1年前のアベノミクス発動直後には、「金融緩和を強化しても効果はない」、その後「円安になっても景気(実体経済)は回復しない」と述べていたのではないか。ただ、2013年の成果を踏まえると、そうした意見は説得力を失いつつある。このため「金融緩和頼みのアベノミクスは持続性がない」、「アベノミクスは長期的に経済成長を押し上げない」と、巧みに主張を変えているように思える。

もちろん、金融政策による景気押上げ効果は永続しない。巡航速度まで経済成長率を高め、デフレを退治するまでしか、金融政策など「経済安定化策」の効果は続かない。それ以上経済成長率を高め、日本人の生活を豊かにするのは、金融政策の本来の役割ではない。その意味で、金融政策などに「持続性がない」というのはその通りである。

ただ、2013年後半からデフレ脱却の兆しが広がっているが、金融緩和政策で+2%インフレを安定的に実現する過程はしばらく続くだろう。金融緩和強化を起因に、脱デフレが進むのであれば、アベノミクスに対して失望するのは時期尚早である。

また、「金融緩和がもたらす副作用」については、考慮すべき点があるのは理解できる。ただ、金融政策が行き過ぎることが、経済構造(具体的には何であるのか不明だが)を歪め長期的な経済成長の弊害になる、という考えに筆者は賛同できない。

そうした考えを持つ方が想定しているのは、「過度な金融緩和策」などで企業の淘汰が進まず、弊害が大きくなるという状況だろう。ただ、デフレに陥った日本でこれまで起きていたのは、廃業などの企業の淘汰が進む一方(廃業率の上昇)で、起業が活発化しない(開業率が上昇しない)、である(グラフ参照)。デフレが続く中でも、新規ビジネスを起こす動きはもちろんあるが、デフレという経済環境で技術革新(イノベーション)が抑えられていた可能性もある。


つまり、長期的な経済成長を支えるのは民間企業のイノベーションだが、それがデフレと経済停滞で抑制されていた面も無視できないだろう。であれば、妥当な金融政策の実現によって、民間のイノベーションも活発になり、長期的な経済成長を引き上げるメカニズムも働く。デフレ退治を最重要課題に掲げるアベノミクスは、長期的な経済成長を阻害するより、むしろ底上げする可能性もあるわけだ。

いずれにしても、最近聞かれるアベノミクスに対する悲観論については、冷静に考えることが必要だろう。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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