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経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”

安易なJAL延命策で先送りされた経営責任と「負の遺産」処理

町田 徹 [ジャーナリスト]
【第82回】 2009年7月3日
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 このところ春の決算シーズンのたびに資金繰りに窮している日本航空(JAL)に対して、また今年も、安易な問題先送り型の延命策が講じられた。日本政策投資銀行が6月末までに実施したJAL向けの融資の8割を政府が保証するという異例の支援が今年のバージョンで、自力で経営しているライバルの全日空が文書で「政策上、公平を欠く」と再考を申し入れる場面まであった。

 「100年に1度」と言われる経済危機の最中だけに、今は大型倒産を防ぎたいと政府が判断したことを、筆者もばっさり間違いだと決めつけるつもりはない。

 しかし、国民の税金を危うくする支援を受けたのだから、その経営責任を明確にするため、JALの西松遥社長らは引責辞任をするべきだった。

 また、今後も、国民の税金を無為な支援に費やす事態を繰り返さないためには、矛盾だらけなのに長年放置されてきた交通政策全般の抜本的な見直しに速やかに着手する必要もあった。

 日本郵政の社長続投、歯止めなき放漫財政の継続、そしてJAL支援…。麻生太郎政権が、随所で、哲学も戦略もない政策を講じているのは明らかだ。

再建計画もないままに
無謀な巨額資金調達を断行

 JALほど、長期間にわたって業績の低迷が続く上場企業は珍しい。日本エアシステムとの経営統合前も含めて、過去14年間のうち8年も最終赤字を計上しているからだ。特に、最近の4年間に限定すると、最終損益が黒字に浮上したことがわずか1度しかないという体たらくだ。

 しかも、前々期(2008年3月期)の決算で、やっと3期ぶりの黒字を計上したのも束の間、再び、前期(2009年3月期)決算では最終赤字に逆戻りしてしまった。さらに言えば、その赤字の規模も尋常ではない。実に631億9400万円と、ライバル全日空の15倍に達した。コスト高を外部環境にあわせて是正できなかった歴史がその背景にある。

 これだけ業績が悪いのだから、資金繰りがきつくなるのは当たり前のことだ。

 JALは2006年3月期、お家騒動と運航トラブルの続出が響いて最終赤字に陥り、無配に転落した。もちろん、格付けもジャンクボンド扱いに落ち込んでいた。それにもかかわらず、決算発表後の2006年6月末に、再建計画すら示していない状態で、巨額の資金調達計画を公表するという暴挙に出た。

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町田徹 [ジャーナリスト]

1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。


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