経済産業省では現在、総合エネルギー調査会・ガスシステム改革小委員会において、都市ガス小売の参入面や料金面での全面自由化など“ガスシステム改革”と呼ばれる制度変更のための検討が進められている。

 これまでの審議経過では、大手ガス事業者から中小ガス事業者までの全員が、全面自由化に賛意を示しているようだ。今後、都市ガス事業に新規参入しようとする他のエネルギー産業(LPガス会社、石油会社、電力会社など)や消費者団体からも、意見を聴くものと予想される。

 去る2月28日、電力小売の参入全面自由化を旨とする電気事業法変更案が閣議決定された。これは“電力システム改革”と呼ばれる一連の法律変更の一環。ガスシステム改革の議論が始まったのは、“電力をやるのだからガスもやれ”といった、いわば電力システム改革の煽りを受けたようなものだ。

 ガス事業法と電気事業法は、ともに公益事業規制としての建て付けで似たもの同士。今回の電気事業法変更案の構成に倣いながら、ガスシステム改革のためのガス事業法変更案がどのような内容になるのか、主な項目について現時点での筆者の試案を文末に提示した。

 その点では、2013年12月2日付けの拙稿で示した筆者の政策思想とは隔たりのある部分が少なからずある。この試案のうち特に重要と考えられる項目に関して、今後さらに検討すべき論点を以下に提示しておきたい。

【論点1】
“機能別規制”と“法的分離”

 電気事業法変更案では、2018年以降に“発送電分離”(送配電部門の“法的分離”)をする前提で、“機能別規制”が提起されている。電気とガスの商品特性や市場構造の相違などを全く考慮せず、ただ形式的に電気事業法変更案の「電気」を「ガス」に置き換えてガス事業法変更案を書いてみると、制度として全く使い物にならない非現実的な面がいくつも出てくる。

 一方で、機能別規制によりネットワーク(導管)や小売に係る機能別規制をガス事業法に組み入れない理由が、見当たらなくなることも確かだ。たとえば、ネットワーク規制が強く残るほど、首都圏での稠密なガス導管事業分離への道筋も見えてくる。