消費者の動きを
マーケティングに応用

 店舗のショールーム化に対して、企業・店舗側も新たな手を打っている。それが、(2)の「店舗を基点としたマーケティング」である。ネットに流れたユーザーを、地図データなどを駆使することで取り戻す「O2O(オンラインto オフライン)の動きともいえる。

「旧来は、位置データのマーケティングへの活用といっても、ローカル広告程度でした。ところが、現在の位置データは、もはやビッグデータの一要素です。顧客の過去の行動・購買履歴がわかるばかりか、店舗のPOS情報と組み合わせることで、顧客のより精緻なニーズや悩みまで把握できるのです。たとえば、ウェブでは購入をためらっていたユーザーを、店頭の接客で最後の一押しをし、成約に結びけるといった事例です」

 位置データをPOSなどと組み合わせることで、「どのような嗜好の消費者がこの商品を買うのか」、また「この商品を買うユーザーはどこから来て、どこに行くか」といったことが迅速かつ効率的にわかる。もちろん、メール等で再来店を促す(図参照)ことにもつながり、リピーターの拡大にもなる。

 なお、このようなマーケティングに際しては、プライバシーへの配慮が欠かせないことは言うまでもない。

「顧客には、消費行動をあくまでも統計処理的に利用させてもらうことを周知します。その代償として、クーポンや便利な順路案内といったメリットを提供し、売る側と買う側の双方が納得することが必要です」

最適解を導く、近未来の
位置データ活用とは

 現在、スマホをカーナビ代わりに使えるアプリも登場している。また、スマホで人の移動を統計的に把握し、地図データと組み合わせることで自治体の防災計画やバス路線の設定に活用するといった試みもある。

「近い将来、ロケーション・インテリジェンスという新潮流が普及すると見ています。地図データを活用することで、ロケーション、つまり場所や製品に付加価値を付けることができます。人の流れを、人数や性別だけでなく、普段からなのか、今日だけなのか、あるいはこの先も続くのかといったレベルまで把握していくことで、単にモノを売るためのマーケティングだけでなく、小売りや流通の出店計画への応用も可能となります」

 現在の位置データ活用は屋外中心に進化しているが、亀津氏は、「屋内」というフロンティアにも注目すべきと強調する。

「たとえば、交通手段の案内に始まり、屋外のルートや店舗表示・検索、クーポン配布等で来店を誘い、店舗内ナビで心地よく移動・消費してもらうなどの『おもてなし』を提供できます」

 地図データの活用で、エリアや場所、建物と内部の空間、製品に新たな価値が付き、魅力の再発見にもつながっていく。