株式レポート
3月7日 18時0分
マネックス証券

止まらないユーロ高 〜それをどう活かすのか〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

来週の重要経済指標をPDF版のレポートに掲載しています


昨晩(3月6日)の為替市場でユーロ高が大きく進んだ。ECB(欧州中央銀行)の政策理事会で、政策金利の据え置きが決定されたことが大幅なユーロ高をもたらした。先週末から、今週の金融緩和(政策金利引き下げ)の観測記事がメディアで増えていたため、市場では追加金融緩和がかなり意識されたが、ECBの判断は据え置きだった。

ECBの政策決定をうけ、ユーロドルは1.385まで大きく上昇している。2013年後半に、何度か1.380付近でユーロ高が抑えられていたが、昨晩このラインを超え、ユーロ高トレンドが明確になった。もう少し過去を遡ると、2012年のギリシャの離脱・ユーロ崩壊シナリオ後退から続く、ユーロ高トレンドがなお続いていることになる(グラフ参照)。


2011年の債務危機で欧州は景気後退に陥り、その後の危機対応で景気後退から脱した。欧州経済の変動が2011〜13年の世界の景気循環に大きく影響していた。今回ECBが金融政策を据え置いた一つの理由は、循環的な欧州の景気回復が続いていることである。

ユーロ高の背景に欧州経済の正常化があるという視点でみると、2012年半ば以降のユーロ高の継続は、今後のマーケットや景気動向を考える上でポジティブである。欧州経済の成長をもたらしたのは、危機収束に加えて、ドイツなどが世界経済回復による輸出拡大で成長している面も大きいからだ(なお、現在の欧州経済の状況については、3月5日に開催したHSBCの田淵氏と筆者のセミナーで詳しく紹介した。)

2014年1月半ばから、市場で不安心理が高まった一因は、米国を含めた世界経済の減速リスクが浮上したことである。そして肝心の米国については、悪天候で経済指標の解釈が非常に難しくなっている。この意味で、欧州の景気指標の動きは通常よりも有用である。そう考えると、昨晩、昨年のユーロ高値を抜けてきたユーロドルの値動きは、年初からの市場の混乱の早期収束、世界経済回復を示唆するシグナルと位置付けられる。

一方、ユーロ高について、上記のように明るい要因としてのみ考えられない面がある。それは、ユーロ高が、欧州のデフレリスクを高めることだ。欧州をかつての日本に例える見方はかなり広がっているが、筆者自身はこのリスクは、かなり大きいと考えている。将来のデフレ入りを想定して、一段とユーロ高が進んでいるという面もある。

日本がデフレという大病を患ったことにはいくつかの要因があるが、筆者が最大の要因と考えるのは、金融政策が機能しなかったことである。バブルへの対処としての日本銀行の行き過ぎた金融引き締め、その後の金融緩和への転換の遅れ、そしてデフレ退治への消極的対応、である。このため、バブル崩壊後の、超円高、デフレ発生、そして金融システム崩壊につながった(金融システム崩壊は、複数の要因によるものだが)。

そして、欧州の場合、ECBはデフレリスクに注力できない「構造問題」を抱えている。言うまでもなく、ドイツと南欧諸国という異なる経済状況の国に対して、ECBが金融政策を行わなければいけないことである。統一通貨ユーロシステムという構造がもたらす負の側面である。そして結果的に、デフレ圧力に十分な金融緩和政策が実現しない、ということだ。

今後1年程度のタイムスパンでみると、世界経済の復調を背景に、欧州もその恩恵をうけるだろう。ただ、長期的にみれば、デフレリスクへのECBドラギ総裁の判断が、欧州経済のパフォーマンスに決定的に影響するだろう。そして両者の面で、為替市場ではユーロ高が長期化するシナリオも十分ありえるだろう。弱い国の通貨が上がるというのは、まさに2012年までの日本が経験したことである。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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