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週刊・上杉隆

『文藝春秋』手記で窮地に追い込まれた麻生首相の危機管理の甘さ

上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]
【第49回】 2008年10月16日
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 先週、本コラムの執筆を終えた直後、永田町ではちょっとした騒動が起きていた。

 騒動の震源は、翌日(10月10日)に発売された『文藝春秋』、そこに寄せられた麻生首相の「強い日本を! 私の国家再建計画」という手記であった。

 現職の総理大臣が月刊誌で論文発表を行うのは珍しい。

 最近では、安倍首相が同じ『文藝春秋』に手記を寄せたが、それは首相辞任後であったし、小泉首相も同様に『文藝春秋』に登場したが、歴史について、作家の池宮彰一郎氏と対談するというものであった。

 ところが麻生首相の論文は違った。首相就任直後の微妙な時期に発表されたうえに、さらに驚くべきことに、その中で「解散日」を特定するような記述があったのだ。

 案の定、その真意をめぐって各メディアは過剰に反応し、大々的な報道が行われる結果となった。

〈国会の冒頭、堂々と私とわが自民党の政策を小沢代表にぶつけ、その賛否をただしたうえで国民に信を問おうと思う〉

 普通に読めば、これは国会の冒頭解散を示している。つまり、麻生首相は、それまでの一連の発言に反して、じつは早期の解散を考えていたということになる。

 だが、この部分の影響は大きかった。解散日を明言しなかったからこそ、麻生首相は「解散をしない」強いリーダーでいられたわけだが、この論文を発表した瞬間に、「解散をできない」弱い指導者という評価に180度変わったからだ。

 首相が、解散宣言をひとつの雑誌で行なったのは、おそらく憲政史上初めてのことだろう。国民の代表である480人の衆議院議員のクビがかかっている解散権を、国会ではなく、『文藝春秋』誌上で発表する、それは明らかに国会軽視である。

 政治歴も長く、幹事長も経験し、派閥の領袖でもあった麻生首相が、果たして本当にそんな愚かな判断を下したのだろうか。筆者は、どうしても信じがたい。

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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


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