株式レポート
3月10日 18時0分
マネックス証券

素直なのも困りもの - 広木隆「ストラテジーレポート」

 「過去を振り返らずに前を見よう」(2月26日付レポート)と言っているくせに、過去のレポートを「記念碑的レポート」などとよく参照したりする。いちばん多いのは相場の底値で「こんな相場は間違っている」と喝破した『PAST だが、その次に多く言及するのが、『素直になれなくて- Think Simple シンプルに考える』(2012年11月16日)というレポートだ。日付を見ておわかりの通り、このアベノミクス相場のスタート点である。その最初の段階から、この相場は本物である、素直に、シンプルに考えて乗っていけばいい、と主張した。しかし、その一方で相場の単純さ、幼稚さにも呆れている。

<日経平均は今日も続伸し、9,000 円の大台を回復した。相場が上がるのは、もちろん良いことだ。しかし、こうも言いたくなる。だったらこの前の7 日続落はなんだったのか?分かっていたことじゃないか、「近いうちに」解散となれば円安・株高となるのは。そこが釈然としないところである>(『素直になれなくて- Think Simple シンプルに考える』)

今日の東京株式市場で日経平均は5日ぶりに反落。終値は前週末比153円安だった。前週に日経平均は4連騰で400円超上昇していたことから利益確定売りが膨らんだ。週末に発表された中国の2月の貿易統計で輸出が大幅に減少したことに加え、今朝発表された日本の2013年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)の伸び率が、2月公表の速報値から下方修正されたことも株価の重石となったと言われる。

中国の輸出減速は置いておくとして、問題は日本のGDPの下振れである。報道にある通り、もしも、これを嫌気した売りも下げの一因となっているとすれば、それには首をかしげたくなる。なぜなら僕の目にはこのGDPの下振れは買い材料に映るからだ。

前回の金融政策決定会合後の記者会見で黒田・日銀総裁は以下のような質疑応答を行っている。

(問) 先程、GDPにつきまして、堅調な内需を背景に伸びが続いているとおっしゃられていましたが、今年度については、日銀の見通しである+2.7%を下振れるのではないかという声が多く聞かれます。(中略) このような見通しの下振れと、その際の政策対応について、繰り返しになるかもしれませんが、改めてお聞かせ下さい。

(答) 最初に申し上げた通り、毎回、金融政策決定会合で色々な議論が行われるわけですし、経済・物価情勢を点検して、上下双方向のリスクが明らかになれば、それぞれに対応した政策の調整を行うということであり、その点には全く変わりありません。従って、ご指摘のようなリスクが顕在化するようなことがあれば、躊躇なく現在の「量的・質的金融緩和」の調整を行うことになります。
(日銀HP「総裁記者会見要旨」より)

<ご指摘のようなリスクが顕在化するようなことがあれば、躊躇なく現在の「量的・質的金融緩和」の調整を行う>とは景気が下振れそうになったら、躊躇わずに追加緩和に踏み切るということである。

GDPは一次速報から下方修正された。日銀の見通し2.7%を達成するには1-3月期で年率5%以上の高い伸びが必要である。いくら増税前の駆け込みがあるとはいえ、大雪の影響もあってそこまでの伸びとなるかは疑わしい。ますます景気見通しが下振れするリスクが顕在化しつつあると言えるだろう。

明日の金融政策決定会合後も黒田総裁は記者会見を行う。同じ記者が、同じ質問をするだろう。そのとき黒田総裁はなんと答えるのだろうか。仮に明日、「ゼロ回答」で会見に臨んだ場合、非常に答えに窮するのではないか。僕がその記者だったらこう詰問するだろう。

「1か月前のこの席上、『そのようなことになったら躊躇なく』とおっしゃいましたよね?」

前回の決定会合では貸出増加支援制度の延長・拡充を打ち出し、「ゼロ回答」にしなかったことが市場に評価された。その記憶が新しいだけに、今回の会合でも、本格的な追加緩和があるかどうかは別として、なんらかの「市場への配慮」があって然るべきだと思う。

そう考えるのが普通の相場だとう思う。それなのに。なんなのだろう、この弱さは。ひとつには、商いが薄く(東証1部の売買代金は1兆7500億円程度)、少しの利食い売りでも相場がくずれやすかったことだ。但し、それも誰も買いの手を出そうとしないことの表れでもある。明日の日銀サプライズに賭けようという投資家がなぜいないのだろう。

もしかしたら、明日、日銀がまったく動かず、その失望売りで再度下値模索になる展開を予想しているのかもしれない。直近のブルームバーグの日銀サーベイではエコノミスト34人中33人が今回の決定会合の結果を「現状維持」と予想している。

「現状維持」=「ゼロ回答」、それがコンセンサスだ。であるなら、失望売りはないはずだ、初めから期待が高くないのだから。むしろ、今回、「ゼロ回答」ならば次回、4月会合には追加緩和期待がかなり高まるだろう。それは、ここから1カ月、下値を売り込むような動きを抑制することにつながるはずである。いずれにせよ、下値は堅いと思う。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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