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2030年のビジネスモデル

「ポジティブ福祉」が始まる

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第17回】 2014年3月13日
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福祉は、自分が最も楽しみながらやることが大事

 岡さん率いるウブドベでは、全国各地で行われる野外フェスティバルの中で、キッズゾーンの運営も受託している。これは子供がグズったときの駆け込み寺みたいなもので、授乳室の他に、アート・ワークショップ、フェイス・ペインティング、ライブ・ペインティング(音楽に合わせて自由にペインティングする)など、子供たちが楽しめる活動を組み込んだ空間になっている。普段、保育士や介護士をやっている人たちが土日に参加し、手伝ってくれるそうだ。しかしなぜ、毎日疲れている保育士や介護士が、無償にも関わらずたくさん集まってくれるのだろうか?

 岡さんによると、フェイスブックやツイッターを通じてボランティアを集めているが、特に野外フェスに参加したい人たちを対象にしてボランティア募集を呼びかけるのだそうだ。彼ら、彼女たちからすれば、好きなアーティストが出演するイベントにスタッフとして無料で入れるチャンス、ラッキー!となる。そんな普通の子たちの普通の気持ちを、結果としてみれば福祉の方向へつなげていくのが岡さんは上手い。

 「ボランティアのシフトを組む時、それぞれに、見たいアーティストを伝えてねと言っています。そこを1時間半くらいの休憩時間にしてあげる。福祉は、自分が最も楽しみながらやることが大事です」

デザインで福祉のイメージを一新する

 「福祉系のホームページは、だいたいデザインがダサいんですよ」と岡さんは笑う。だからウブドベでは、福祉系のクリエイティブに関わるコンサルティングもしている。

 「こんなホームページなら止めたほうがいいですよ。フェイスブックにしたほうがいい。若い従事者の写真をとって、ちょっと輝いている活動を載せましょうよ!」

 2ヵ月間で「いいね」が6倍に跳ね上がった。

 岡さんは、若い頃からの経験と人脈を通じて、イベント、ウェブデザイン、グラフィックデザイン、写真・映像製作、オリジナルソングの作詞作曲など、ほぼなんでもできるクリエイティブ・チームを作っている。このチームのプロたちは、はじめ「俺たちは福祉のことは何もわからないから」と躊躇したが、「何もわからなくていい。福祉のことは僕が伝えるから。それに、変に染まらなくてもいいんだ」と岡さんは説得した。結果、このチームは、従来の福祉っぽくないキャッチコピーやデザインを作り上げ、輝いて働ける業界の環境づくりに一役かっている。

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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