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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

医療分野のチャンスとリスク
アベノミスクは切り込めるか
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]
【第129回】 2014年3月12日
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安倍政権の構造改革は
医療分野と密接に関係

 「三本目の矢」の話は聞き飽きた、と思う人は多いだろう。しかし、日本経済の立て直しは、ここからが正念場だから、政権運営をきちんと注視しておかなくてはいけない。構造改革の核心は、本稿で見ていく医療分野と密接に関係しており、それを改革せずにアベノミクスは成功しないと考えられる。

 まず、将来の国民医療費は現在の38.4兆円(2012年度)が、給付費ベースで2025年度には54.0兆円へと急増する見通しである(図表1参照)。

 この2025年度という時期は、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になって、医療費負担が本格的に増えるタイミングである。当然、国庫負担は増加して、政府の財政負担も巨大になる。わが国の財政問題は、労働力人口が減少する中で、高齢化の社会的コストに耐え切れるかという問題だ、と言い換えられる。

 医療費の増大は、現役世代にも健康保険料率の引き上げというかたちで割り当てられる。企業の中には、健康保険料などの事業主負担の増加を嫌気して、社会保険料負担を軽減するために、労働力を正社員から非正規労働へと代替する先が少なくなかった。

 ところが、労働力を非正規にシフトすると、日本全体の総労働時間は短くなり、マクロの雇用者所得も低下して、所得税収は低下してしまう。財政健全化にとって、高齢化の重みは、歳出増と歳入減の双方向で足枷になっている。

 ここまでの説明で、財政赤字拡大も労働市場の変容も共に、高齢化が効いていることがわかったであろう。非正規化の対策として、限定正社員という仕組みをつくってもなくならない。社会保険料負担が増えれば、ますます正社員を最小限に絞り込もうとするだろう。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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