セミ・グローバル化で大きく変わる仕事の進め方

 時差を活用して仕事をするということは、実は日本国内でもできます。たとえば、自分のいるタイムゾーン(例:日本)で業務時間が終わっていても、自分のいないタイムゾーン(例:インドやヨーロッパ)では、まだ業務時間内にあるからです。

 顧客サポートサービスなどの領域では、すでに何年も前から、こうした時差を活用した人的資源の有効活用が行われてきました。たとえば、英語を使ったITヘルプデスクや製品ヘルプデスクの場合、24時間営業のヘルプデスクであれば、深夜や早朝に電話をしたら、その時間帯に深夜や早朝ではない別の国々の人が電話を受けることがすでに行われています。

 こうした考え方が、コンサルタントが係るような経営戦略や事業企画の領域に入り込んできても、なんらおかしくはありません。

 私自身も、本当に時間に追われて作業をするときは、自分が寝ている間に作業をしてくれるイギリス在住の英語校正者に仕事をお願いします。また、調査会社に電話するときも、まだ問い合わせ窓口が開いている国の窓口に問い合わせ、24時間を最大活用しています。

 ヨーロッパにいるときは、インド、日本、中国、そしてアメリアの調査会社や調査スタッフに作業をお願いし、24時間を最大活用する。私が海外のマッキンゼーで生き残ることができたのは、こうした業務手法を実践できたからでもありました。

 事前に彼らの作業時間をブロックしておき、自分が起きている間に分析や情報収集手法を設計して、自分が寝ている間に分析や情報収集をしてもらい、自分が起きたらそれを取りまとめる。

 そうすることで、体に無理をかけない形で24時間の稼働を継続できます。しかも作業の特性に応じて、総体的に人件費が安い国のスタッフを活用したり、逆に能力が高いスタッフを別の国から活用したりと、柔軟に、より広い人材プールからプロフェッショナルを調達して、24時間操業を実現できるのです。

 本当に締め切りまでの時間がない、企業買収のデュー・デリジェンスのプロジェクトでもこうしたことは行われているといいます。コンサルタントを時間帯の違うところに配置して、それにより締め切りに間に合わせるようです。

 私は、ある時点から、このような「グローバルを活用した業務遂行手法」の実践経験が積み重なり、世界のどのような環境においても、期待された価値が出せるようになっていきました。

 たとえ赴任したその国をよく知らなくても、現地を理解する人の力を借りて、そしてこれまでに一緒に働いた世界中の人たちと協力して、現地でプロとしての価値を発揮する。別の国々で実践したことを、その国に適合させて成果を出すことができると、次第に自信をつけていったのです。