分けやすい不動産に組み替えしておくのがトラブル回避のポイント

「遺産分割をめぐるトラブルで特に多いのは、一部の相続人が自分の取り分を主張して譲らないケースです」と曽根氏。

 右に示した二つの事例はその典型例だ。どちらのケースにも共通するのは、被相続人が遺言書を残さなかったこと。

「被相続人が遺言で、誰に、何を分けるのかを明確にしておけば、遺産分割でもめるリスクを抑えられます」

 また曽根氏は、「相続財産の約半分は不動産ですが、土地や建物は分けにくく、遺産分割をめぐるトラブルの原因となることが非常に多いです」と語る。

 例えば、相続する財産が自宅の土地と建物だけしかないと、複数の相続人で分割することは困難だ。複数の土地を相続したとしても、それぞれの立地や面積、用途、評価額などが異なれば、相続する財産に不公平が生じて争いの元となりやすい。

不動産を賃貸にすれば評価額は大幅に下がる

 こうしたトラブルを防ぐには、被相続人が存命のうちに、保有する不動産を各相続人に分けやすい不動産に買い替えておくことが望ましい。自宅についても、長く住み続ける意思がないのなら、分けやすい不動産に替えたり、賃貸住宅などに建て替えたりしておくことが有効である。

「賃貸住宅に建て替えれば、相続税評価額が下がるので節税効果も期待できます。さらに、家賃収入が受け取れるので、残された家族の支えにもなります」(曽根氏)。生前に不動産を組み替えておけば、“争族”対策と節税が同時に実現するわけだ。

 相続税は相続する資産の評価額に応じて課税されるが、その評価額を下げる最も有効な方法は不動産活用である。

 例えば、預貯金や現金は額面そのままに評価されてしまうが、不動産なら用途や形状、敷地に面する道路の状況などによって、市場価格(時価)よりも評価額を下げることができる。

「一般に、土地は時価の約8割まで、建物は時価の半分以下まで評価額を下げることができます。そして、土地や建物を賃貸用途にすると評価額はさらに下がるのです」

 土地を貸家建て付け地にすれば評価額は時価の約6割に、建物を賃貸住宅にすれば借家権が発生して時価の約3割になるという。その分、相続税の納税負担も大幅に軽くなるのだ。

 遺産分割をめぐる争いや納税の苦しみを避けるためにも、不動産活用を検討してはどうか。できる対策は、なるべく早いうちに打っておいたほうがいい。

POINT

遺言書を残して、誰に、何を相続するのかを明確にし、オープンにしておく

分けにくい不動産を相続するのもトラブルの原因。分けやすい土地や賃貸住宅などに組み替えておく

賃貸住宅にすれば相続税評価額が大幅に下がり、納税負担が軽減される