ルーティン業務として回収リスクを低減する方法

――先方の信用状態が確保された後、売掛金管理をルーティン化する場合の注意点とはどのようなものでしょうか。

田沢 通常の請求書を送付することは当然として、支払期限の1週間前、3日前と段階的に代金支払期限を認識させる手段が検討されます。証拠化という意味では、書面による方が望ましいでしょう。

 請求書ではなくても、取引残高確認書といった書面を作成して送付し、「内容に相違ありません。支払期限までに代金をお支払いします」などといったチェック項目にチェックさせて返送させれば、さらに証拠を増やすことにもつながります。取引を裏付ける関係書類は、支払いを拒否された場合の証拠となるため、関係書類を作成・保存しておくことは、債権管理上、極めて重要です。それに限らず、発注書や注文請書、納品書、商品受領書、請求書、売上台帳などは、確実に保存しておきましょう。

――企業が倒産に至るプロセスには、いくつかの段階があるといわれていますが、取引を継続する以上、信用情報を定期的に取得することは重要ですね。

田沢 初期の兆候としては、景気が上昇傾向にあり同業者の売上高が増加しているにもかかわらず、低下傾向が続いていること、過大な在庫を抱えていること、不良債権が生じていることなどです。さらに、過大な借入れ、支払いの遅滞、賃金の遅配などが生じ、支払条件の変更申入れがされた場合は要注意となります。営業担当者が、得意先の社員で親しい人物を定期的に訪問し、経営状態に関する情報を入手したり、紹介者や他の取引先などでの評判を聞いたりするなど、最初から多大なコストをかけなくても、日々の営業活動の中でリスク回避のためにできることはあります。