株式レポート
3月12日 18時0分
マネックス証券

相場の値動きが荒い理由【修正版】 - 広木隆「ストラテジーレポート」

3月12日に掲載したレポートのグラフ1とグラフ2を修正いたしましたので再度ご覧ください。


昨日の日銀金融政策決定会合では現状維持が決定された。僕がひそかに期待していた追加緩和は見送られた。日経平均は一時売りに押され、あわや前日比マイナスに転じる寸前まで上げ幅を縮めたものの、その後は再び堅調となり結局100円程度高く引けた。3月10日付レポートでは、
<「現状維持」=「ゼロ回答」、それがコンセンサスだ。であるなら、失望売りはないはずだ、初めから期待が高くないのだから>と述べた。そこまでは想定通り。そのあとに述べた部分は読みが外れた。

<むしろ、今回、「ゼロ回答」ならば次回、4月会合には追加緩和期待がかなり高まるだろう。それは、ここから1カ月、下値を売り込むような動きを抑制することにつながるはずである。いずれにせよ、下値は堅いと思う>
と述べたのだ。

そう述べた矢先に、日経平均は急落。今日の前場は全面安商状となり、日経平均は一時300円安を超えるところまで下げ幅を拡大した。1万5000円の大台を割り込み、バリュエーション面の割安感も台頭しようというのに、一向に買いが入ってこない。もう、ほんとうに、いやになるくらいに、繰り返し繰り返し何度も述べていることだが、「投資家不在」。ファンダメンタルズに注目し中長期で投資する投資家がいない。日本株投資家層の厚みがない。それがこの「一方通行相場」の根本的な理由である。同じ嘆きを何度も読まされる読者のほうも辟易とされていることだろう。分かっちゃいるが溜め息が止まらない。

なんとかならないものか、この不甲斐なさ。売られるような理由があって、売られるべくして売られて株価が下がるなら、まだ諦めもつく。当然だと思う。しかし、今日の下げに理由などない。メディアの取材にもそう答えたら、「それじゃ記事が書けません」と言う。何もこっちはメディアに記事を書かせるために、「相場が下げた理由」を無理にひねり出す必要はないから、「それが相場というものだ」と言って電話を切った。

昨日の米国株式市場は下落した。主要3指数そろって0.5%前後の下落となった。中国経済に対する不透明感が強い中、銅や鉄鉱石など商品市況が急落し、代表的なコモディティーである原油安につながったことで資源・エネルギー株が売られ相場の下げを主導した。

きっかけは先日起きた上海超日太陽能科技による中国社債市場初のデフォルト(債務不履行)。その直後から銅、鉄鉱石とも投げ売りに近い状況となったが、そもそも中国は銅や鉄鉱石を異常なくらいに買い込んでいたため、需給が崩れるのは時間の問題だった。

マーケットメール朝刊ではこう書いた。
<確かに商品市況は下落していますが、銅相場が大幅安となったのは上述のとおり、先週末7日の話です。ニューヨーク銅先物は昨日3日続落で節目となる1ポンド3ドルの大台を割り込んだことが改めて嫌気されたのかもしれませんが、米国株式市場は高値圏にあるだけに利益確定売りを出す材料にされた感があります>

米国株はちょっとしたことで売られやすい。なにしろ歴史的な高値にあるのだから当然だ。リスク回避の円高?ちょっと103円を割ったくらいではないか。

日経平均が300円も下げる―そこに真っ当な理由などあるわけがない。

最近の相場を見て、荒い値動きだと感じられている方は多いだろう。実際に去年の日中の動きを過去と比べても、いかに変動が大きいかがわかる(表1)。去年は記録的な大相場だったから前日比の変化率が大きくなるのは当たり前だ。加えて、日本株は海外市場の影響を受けやすいので、寄り付きから窓空けして始まることが多い。よってここでは、当日の寄り付きの値から終値までの変化率を見た。


表2は高値引け・安値引けの日数である。年間の営業日がだいたい250日だから、その2割が高値引け・安値引けになっているとは異常である。過去平均の2〜3倍だ。


こうした変動の大きさや一方通行相場になりやすいのには、テクニカル的な要因が考えられる。実は、これはある方からの受け売りである。その方は、某外資系証券のデリバティブ・トレーディング部門の責任者を務められている。いつもなら「Aさん」や「B氏」のようにアルファベットでイニシャルを書いたりするのだが、その方はメディアにもよくコメントを出されているのでイニシャルを出しただけでもご本人が判ってしまう。ご本人のお立場に配慮して伏字で失礼致します。○○さん、ご分析、拝借させていただきます!

市場の変動が大きくなった要因のひとつがレバレッジ型ETFの隆盛である。残高は急拡大している(グラフ1)。そして商いも盛んだ。なにしろ東証1部売買代金ランキングの上位常連銘柄に匹敵する商いが続いている(グラフ2)。



レバッレジ型のETF等の、いわゆるブルベア型ファンドというものは、対象とする指数(例えば日経平均)の前日比の騰落率の2倍動くように設計されている。日経平均が前日比1%上昇するならファンドは2%上昇する。こういうファンドは先物で運用しているのだが、指数の2倍の変化率となるパフォーマンスをあげるには大引けでファンド純資産のきっちり2倍のエクスポージャーとなるように先物の持ち高を調整する必要がある。

その日の相場が上がると、値上がり益の分だけ純資産が増える。その分は先物を買わなければならない。すると、レバレッジ型投信が大引けで買いを入れてくることが読めるから先回り買いをしようという誘因が働くことになる。下げの場合はまったくその逆だ。こうしてレバレッジ型投信の先物売買を見越した取引が、その日の騰落率を増幅させる一因となっていると考えられる。

もうひとつ、相場変動を大きくしている要因がある。オプションのヘッジ取引だ。昨年、外国人投資家は過去最大となる15兆円も日本株を買い越した。それが昨年の大相場の原動力となったわけだが、15兆円の買い越しというのは現物株の話。相対取引なのでオフィシャルな統計には表れてこないが、実はヘッジファンド勢を中心に日本株のコール・オプションも大幅に買い越している。推計では、元本換算ベースで15兆円に達するという。

ヘッジファンドにコール・オプションを売っている外資系証券は、裸で日本株のショート(空売り)ポジションなど抱えたくないから、当然ヘッジをする。先物を買うわけだ。ところが、相手に売り渡したコール・オプションの元本換算額を先物買いで手当てすればヘッジ完了かというと、ことはそんなに簡単ではない。

オプションのプレミアム(価格)は原資産(例えば日経平均)の価格変動に伴って変動率が変化するのだ。オプションの話は難しいので、端折って説明すると、例えば相場が上がり出すと、もっと先物の買いポジションを増やす必要が出てくる。相場が上がれば上がるほど、その上昇相場を追いかけて先物買いをすることになる。これも下げ相場ではまったく逆のことが起きる。

ちなみにこれらの取引は統計上、外国人による先物売買となる。日本にある外資系証券から発注されても、その取引のブックはロンドンだったりするからだ。外国人のデリバティブ取引が相場を掻き回しているなどとの批判を目にすることがあるが、実際には特に思惑はなく、ヘッジ目的で機械的に売買している部分もかなりあるのだ。

同様に一部で誤解が見られるのが裁定取引である。
昨年末には4兆円に達していた裁定買い残は2月中旬には2兆6千億円台まで減少した。これは需給面での好材料には違いないが、その理由を潜在的な売り玉が減ったからとするのは正しくない。裁定解消に伴う現物株売りで相場が売り崩されるというイメージが一般にあるようだが、裁定取引とはそもそも現物買いと先物売りがセットになっているものだから、裁定解消で現物株が売られるときにはその一方で先物が買い戻される。つまり裁定解消それ自体は相場の方向性には影響しないのだ。

では何が問題かというと先物主導の下げが加速することである。裁定取引は先物と現物とのベーシス(価格差)が理論値を超えて拡大・縮小する局面でポジションが組まれたり解消されたりする。最近の相場の上下動は先物主導となることが多いが、それによってベーシスの拡大・縮小が起こり裁定取引の買い・売りを誘発している。裁定解消売りで相場が崩れるというより、下落局面では裁定解消売りを誘発する仕掛け的な先物主導の動きが強まることが相場の攪乱要因になると解釈するべきである。

僕が想定していた一目均衡表の雲のねじれを縫って、雲の上に浮上するというシナリオはあっさりと棄却された。このナローパス(狭い道)を通すことを失敗した以上、今度は均衡表の雲が上値の重石となりそうだ。最悪のケース、年度末までこの軟弱な相場が続いてしまうかもしれない。暦の上では啓蟄を過ぎ、あと一週間ほどで春分であるが、相場に春が訪れるのはもっと先かもしれない。

いつになく暗いままレポートを結んでしまっては後味が悪い。あえて明るい面を見るなら、冒頭に述べたように、「売られる理由なくして下げた相場」だということだ。根本的な悪材料があるなら、その改善を待つ必要があるが、為替相場を見ても分かるように外部環境に大きな変化はない。あるとすれば今日、このレポートで述べたような「特殊要因」で相場の振れが増幅され、薄商いのなか大きな下げにつながったというものだ。「売られる理由なくして下げた相場」であるなら、案外、たいしたきっかけもなく戻すかもしれない。合理的な理由は何ひとつないが、週末のメジャーSQや来週のFOMCが終われば、イベント通過で相場の地合いが変わる可能性はある。

年度末が近付けば、新年度相場への期待、日銀の4月追加緩和期待、新年度業績への視点の移動など上昇要因はある。やっぱり、春遠からじ。夜明け前が一番暗いのだ。



(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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