昨年秋、厚生労働省は違法な過重労働などの疑いがある事業所に対して、全国規模の調査を実施した。4000事業所以上で法令違反が明らかになり、問題の深刻さを印象づけた。いま、コンプライアンス強化などを目的に勤怠管理のあり方を見直す企業も多い。実は、勤怠管理には法規制対応だけでなく、さまざまなメリットがある。数十の顧問先企業で労務管理を指導するとともに、労働者側に立ってトラブル解決に取り組むことも多い特定社会保険労務士の松本健一氏に、労務リスクと課題解決へのアプローチを聞いた。

「ブラック企業」調査で
4000超の法令違反が明らかに

 昨今、「ブラック企業」という言葉がさまざまなところで取り上げられるようになった。社会的な関心の高まりを受けて、厚生労働省は昨年秋に全国規模の調査を実施。その結果、違法の疑いのあった5111事業所のうち、82%に相当する4189事業所で法令違反が明らかになった。

図 厚生労働省の調査で見つかった主な法令違反

 主な法令違反の中身は図に示した通りである。最も多かった「違法な時間外労働」の典型例は、企業と従業員側で合意した36協定で定めた時間を超えた残業が横行しているといったケースだ。「賃金不払い残業」は、いわゆるサービス残業である。

 また、厚労省調査の5番目には「賃金台帳の記載漏れなど」が入っている。実は、賃金台帳や労働時間の管理が杜撰、あるいは不十分という企業は少なくない。特定社会保険労務士の松本健一氏は次のように語る。

 「企業が従業員の労働時間を管理するのは当然ですが、それができていない企業もあります。労働時間と賃金が必ずしも連動しない裁量労働を導入している場合でも、企業が時間の管理をしなくてもよいというわけではない。企業は従業員の健康や安全に配慮する義務を負っているからです」

 この義務を怠った企業で従業員の健康に深刻な問題が起きれば、「損害賠償を請求される場合もあります。逸失利益などを考えると、その金額が数千万円になるケースもある」と松本氏。また、労災や過重労働などで調査を受けた企業が、悪質と判断されて書類送検の処分を受けることもあるという。

ネット上の悪評はすぐに拡散する
人材採用へのダメージも大きい

 厚生労働省は違法な過重労働に対する監視姿勢を強めており、企業としてはこれまで以上に厳格な対応が求められている。また、コンプライアンスの観点だけでなく、「ブラック企業」のイメージは企業にさまざまなダメージをもたらす。

 「ちょっとしたことでも、最近はすぐにSNSに書き込まれてしまいます。例えば、アルバイト募集の求人広告で勤務条件について曖昧な表現を使っただけで、『ここはやめたほうがいいよ』といった反応があったりします。特に就活中の学生はネットで盛んに情報交換をしているので、いったん悪いイメージができてしまうと人材採用にも大きな悪影響を及ぼすことになるでしょう」と松本氏は言う。

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