「あたりまえ」の中に眠る大きなニーズを見逃すな!
<課題5 調理の際の効率が悪い><課題6 農業の生産性が低い>

――日本に暮らしていて普段「あたりまえ」と思っているものの中に大きなニーズがあるんですね。

中村 そういう意味では、途上国であれ日本であれ、「食べる」というのは欠かせない行為です。ですが、食事をするには、お米、野菜、(特別なときには)肉といった食材を「調理」しなければいけません。ガスや電気という「あたりまえ」のない途上国では、貧困層の多くは薪を使って調理しています。この問題を抱える人は、地球上に27億人います。

――薪、というと、日本ではキャンプ場でしか見ませんが、どんな問題があるのでしょうか。

なぜ日本企業は<br />途上国のブルー・オーシャンに気づけないのか?石を3つ集めて、その下に薪をくべる。途上国で一般的な「スリー・ストーン・クッキング」と呼ばれる方法だ
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中村 3つあります。まず1つ目は、空気汚染の問題。薪を燃やして出る煙での室内空気汚染で死亡する人の数は、全世界で年間190万人を超えます。2つ目は、労働負荷の問題。薪を集めるため、主に女性と子どもたちが1日のうち多くの時間を取られています。そして3つ目は、環境破壊の問題。3つの石の下に薪をくべて燃やしているだけなので、燃焼効率が悪い(熱がどんどんと逃げていく)ため、多くの薪を使う必要があります。結果、村の木々は伐採され、環境破壊にもつながっていってしまいます。

なぜ日本企業は<br />途上国のブルー・オーシャンに気づけないのか?コペルニクが扱っている燃焼効率のいいコンロのひとつ

 こうした調理の際の煙を減らして、かつ燃焼効率も高い「調理用コンロ」も、コペルニクはたくさん扱っています。

――食事の調理もそうですが、食物の確保もたいへんそうです。

中村 生産性の低さはもちろん、ここで指摘しておきたいのは、「保存」の問題です。たとえばインドネシアの東ヌサトゥンガラ州では、収穫したトウモロコシの30〜70%が失われてしまいます。ネズミやワラジムシに食べられてしまうんです。

――「食べ物の保存」にニーズがあるとは! 日本企業でも「解決策」を持っているところは多そうですね。

中村 本当にその通りで、足りないのはこうした「現地の状況に則したニーズ」を知ることだけだと思っています。