株式レポート
3月19日 18時0分
バックナンバー 著者・コラム紹介
マネックス証券

然るべきところに - 広木隆「ストラテジーレポート」

<優馬は退屈しのぎにまた携帯を出し、出会い系のアプリを開く。指先をちょっと動かすだけで、次々と男たちの写真とプロフィールが目の前を流れていく。年齢、体型、趣味、好きなセックスなどで検索をかければ、何万人という登録者が徐々に絞られていく。上半身裸の画像を載せている者もいれば、好きな音楽をリストアップしている者もいる。いつものことだが、こうやってこのサイトを眺めていると、この中の全員と会おうと思えば会えるのだと楽しくなってくる反面、全員と会えるということは、結局「誰とも」会えないのと同じだとも思う>
(吉田修一『怒り』)

つながっていたくない

僕は、元来、社交的でない。大勢でカラオケで盛り上がるより、バーで独り飲むほうが好きだ。団体スポーツは苦手である。チームプレーというものができない。学生時代は個人競技のスポーツしかしなかった。ファンドマネージャーの仕事が好きである。なぜならファンドマネージャーという仕事は、基本的に自己完結型の仕事であるからだ。しかし典型的な日本の運用機関は「合議制」で運用方針を決める「組織運用」。それには閉口した。

僕はケータイを携帯しない。肌身離さず持ち歩くということをしない。基本的に、外出時、こっちから電話するときに使うだけだ。だから連絡がつかない、とよく怒られる。

最近のひとは「ケータイ依存症」が多いと聞く。ケータイを持っていないと不安だという。いつもスマートフォンでツイッターやフェイスブック、LINEなどのSNSを覗き、友達のメッセージや書き込みを確認して、そういうコミュニティーに「つながって」いないと不安だという。

僕は「つながって」いたくない。つながろうと思えば、誰とでもつながれるような、そんな希薄で軽いつながりは要らない。本当につながっていたいひとは、ごくわずかしかいないからである。本当に大切なひととは、魂の奥深いところでつながっている。それはスマートフォンの画面に流れてくる浅薄なメッセージなどとはまったく別のものなのだ。

投稿が荒れる

冒頭に引用したのは作家・吉田修一の最新刊『怒り』からの一節だ。『悪人』以来7年、吉田修一の新たな代表作との呼び声高い傑作である。

ゲイの優馬が、連れ込んだ正体不明の男・直人に向かって、お前のことまったく信用していない、もしも留守中にこの部屋の物を盗んで逃げたらすぐに通報する、と言う。直人は動じない。優馬は思う。「俺はお前を疑っている」と疑っている奴に言うのは、「俺はお前を信じている」と告白しているのと同じことかもしれない、と。

相場が下落すると僕への投稿ページが荒れる。途端に悪口、誹謗、中傷のたぐいが増えるのである。それは、もう、ものの見事というくらい相場の上げ下げと連関している。

「お前のおかげで損をした」「お前の予想は当たらない」「お前の言うことは信じられない」 ― 異口同音に並ぶ悪口・苦情はたいていがそんなところだ。しかし『怒り』の登場人物・優馬が言うように、<「俺はお前を疑っている」と疑っている奴に言うのは、「俺はお前を信じている」と告白しているのと同じこと>であるとすれば、こうした苦情を言ってくるひとたちは、僕を信じているひとたちでもあるのだろうと思う。

「愛してる」の反対語は「嫌い」ではなく、「無関心」。僕に苦情を言ってくるひとたちが、本当に僕のことを嫌いなら、僕が書いたものなどに目を通すはずがない。僕も常々思う、「嫌なら読まなければいいのに」と。それでもレポートを読んで文句を言ってくるというのは、「読みたいから」読んでいるとしか結論付けられない。

ひとは弱い。すぐ誰かに頼りたくなる。頼った相手があてにならないと、「可愛さ余って憎さ百倍」、うらみつらみのオンパレード。そういう構図だ。

クレームや悪口を寄越してくれても結構だが、ひとつだけお願いというか助言がある。汚い言葉を使うのはやめたほうがいい。汚い言葉を目にするこちらも気が滅入るということもあるけれど、あなたたちのためにならないからだ。汚い言葉や軽い言葉を使っていると人間性まで駄目になる。言葉は大事だ。僕も7歳の娘に日頃から言って聞かせている。「きれいな言葉を使いなさい」と。
市場は常に行き過ぎる

3月12日付のレポートで相場の値動きが荒い理由を述べた。14日に出演したテレビ東京のニュースモーニングサテライトでも同様の解説を行った。しかし、そこで指摘したレバレッジ型商品の増加やコール・オプションをショートしている業者の先物ヘッジなどは、相場の振幅を大きくする要因の一部かもしれないが、根本的な問題は市場参加者層の厚みがないことである。マーケットというものは多種多様な考え方を持った参加者が取引を行う場所だ。悪材料で売る投資家がいる一方で、それを好機と捉えて買い向かう投資家がいる。ところが日本株市場は「投資家不在」の状況。だから短期的な利ザヤを狙う一部の投資家の取引でその日の方向性が決まってしまう。日本株のボラティリティの高さは市場の構造問題の象徴である。

読者からこういう質問が来た。
<広木さんが最近の日本株の下げに対し、「日本には投資家不在」ということをよくおっしゃっています。米国市場に比べて日本市場の参加者層が薄いのはそうでしょうが、他の先進国・新興国と比較しても、日本だけ突出して下げているケースが多いように思います。他のすべての国と比べて「日本には投資家不在」ということもないだろうと思います>

日本は、株式市場の時価総額は米国に次いで世界第2位(英国とデッドヒートしているが)、GDPは世界第3位という経済大国である。それだけの国の株式市場にしては、投資家の層が薄い、という意味である。なまじ、市場に流動性があり、その割には(投資家層が薄いため)相場観が偏りがちになる。結果として、一方向に振れが大きい値動きとなりやすい。

3月12日付のレポートで相場の値動きの荒さを語った直後の14日には、日経平均は再び大幅安。下げ幅は一時500円を超えた。これはもう異常としかいいようがない。いや、やっぱり異常ではない。相場とはこういうものだ。程度問題かもしれないが、相場とは常に行き過ぎるものだ。自分自身で、2月の上旬に「市場は常に行き過ぎる」というレポートを書いたばかりではないか。

市場のオーバーシュートを言い表した名言がある。「本当の強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観とともに成熟し、陶酔の中に消えていく」 稀代の名投資家、ジョン・テンプルトンの言葉だ。図示するとすればこんな感じだろうか。



これは著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』のなかで掲載した図である。そこではこう述べた。
<重要な点は、「悲観の中に生まれ」「陶酔の中に消えていく」というところだ。つまり相場のターニング・ポイント(変局点)では、市場は必ず行き過ぎる。実態から乖離が大きくなるということである。ファンダメンタルズの悪化はもう止まっているのだけれど、悲観に傾いた市場はそれに気づかない。逆に楽観が強まれば、ファンダメンタルズは既に悪化しつつあるのに、市場はそれを見過ごしてしまう>

もうひとつの重要なメッセージは、市場でついている株価は、フェアバリュー(適正価格)なり本当のトレンドなりというものと一致している期間はわずかであるということだ(グラフ2)。相場は上にも下にも行き過ぎる。しかし、いつかはフェアバリューに戻ってくる。それを見極めることこそ株式投資の王道だろう。


業績回復のトレンドライン

今日の日経新聞「マネー&インベストメント」欄に2月末の日経平均を予想した「日経平均ダービー」の結果が載っている。僕は1万6500円の予想を出してダントツの最下位だった。懲りずに3月末の予想も1万6250円と出している。このままいけば連続してダントツの最下位となるかもしれない。

それでもいい。僕が示しているのは、「そうなるであろう値」ではない。「そうなって然るべき値」を出している。市場価格(=グラフ2の曲線)を追いかけても当てられない。ならばフェアバリュー(=グラフ2の直線)で待っていて相場が戻ってくるのに賭けようというメッセージだ。

では、そのフェアバリューとは何か?概念図でなく、現実の世界でその直線を引いてみろ、と言われたならば、僕が描く直線はこれである。



企業業績の回復トレンドだ。日経平均の1株当たり利益(EPS)は今期ですでに1,000円を超えている。これは過去最高である。来期はここからさらに1割伸びるというのが市場のコンセンサスである。1,100円のEPSをPER 15倍で評価してやれば日経平均は 1万6,500円。これがフェアバリュー、「そうなって然るべき値」だと思う。

今は、ウクライナ情勢、中国経済の不透明感などから市場の評価が覚束ない。しかし、ファンダメンタルズに目を向けるときは必ずやってくる。僕は遅くとも4月下旬から始まる決算発表がそのきっかけになると思う。2013年度決算を締めて見れば、「上場企業、過去最高益更新」という大きな見出しが新聞紙上に踊るだろう。それは来期予想ベースならかなりの確度で見込まれる。いや、2013年度で最高益更新となる可能性だって捨てきれない。

今月上旬の日経新聞に、4〜12月期の9カ月間で順調に業績を上げ、年間の予想経常利益を達成する上場企業が相次いでいるという記事が載った。記事は「3月の年間決算へ向けて利益が上振れする余地があるといえ、上場企業全体で最高益だった2008年3月期に迫る利益水準になる可能性がある」と伝えている。

業績回復のトレンドは過去最高益更新に向かっている。これがフェアバリューのトレンドだ。それにちゃんと目を向けずに、いつまでも、ウクライナだ、中国だ、と言っている場合ではないだろう。昨日は彼岸の入りだった。着実に季節は春に向かっている。

益嶋  「だから1万5000円を下回っている水準は買いなんですね」

「前からそう言ってるじゃんか。だいたい新興国の景気不安とか言われてるけどインドの株式相場なんて昨日、最高値更新してんだぞ。どこが新興国不安なんだよ。
あ、ちょっと待て、アゲハちゃんからLINE来たから」



益嶋 「広木さん、汚い言葉や軽い言葉を使っていると人間性まで駄目になるんじゃなかったんでしたっけ?そのメッセージ、ヘリウムより軽いんですけど」

「ん?そうかなあ〜。そんなことより、良かった〜、ちゃんとつながっていて」

益嶋 「『本当に大切なひととは、魂の奥深いところでつながっている』って台詞、ボク、素直に感動しちゃったんですけど。本当につながっていたいひとは、何人もいなんじゃないんですか?」

「え?そうだよ、そんなに多くない。アゲハちゃんだろ、レイナちゃん、ミユちゃん、それから…あ、『クラブS』の杏ちゃん、このくらいだよ」

益嶋 「全員、キャバクラ嬢じゃないですか!真に受けたボクがバカだった…」



(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

■ご留意いただきたい事項
マネックス証券(以下当社)は、本レポートの内容につきその正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。当社が有価証券の価格の上昇又は下落について断定的判断を提供することはありません。
本レポートに掲載される内容は、コメント執筆時における筆者の見解・予測であり、当社の意見や予測をあらわすものではありません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。
当画面でご案内している内容は、当社でお取扱している商品・サービス等に関連する場合がありますが、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。
当社は本レポートの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
本レポートの内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。当社でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動・金利の変動・為替の変動等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
なお、各商品毎の手数料等およびリスクなどの重要事項については、マネックス証券のウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」(※)をよくお読みいただき、銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で行ってください。
((※)https://info.monex.co.jp/policy/risk/index.html)

■利益相反に関する開示事項
当社は、契約に基づき、オリジナルレポートの提供を継続的に行うことに対する対価を契約先金融機関より包括的に得ておりますが、本レポートに対して個別に対価を得ているものではありません。レポート対象企業の選定は当社が独自の判断に基づき行っているものであり、契約先金融機関を含む第三者からの指定は一切受けておりません。レポート執筆者、並びに当社と本レポートの対象会社との間には、利益相反の関係はありません。

(マネックス証券)


マネックス証券
株式売買手数料(指値) 口座開設
10万円 30万円 50万円
100円 250円 450円
【マネックス証券のメリット】
日本株投資に役立つ「決算&業績予想」、信用取引ではリスク管理に役立つ信用取引自動決済発注サービス「みまもるくん」が便利。米国株は最低手数料5ドル(税抜)からお手軽に投資が可能で、米国ETFを通じて世界中に分散投資できる。投資先の調査、リスク管理、リスク分散など、じっくり腰をすえた大人の投資ができる証券会社と言えるだろう。一方、短期・中期のトレードに役立つツールもそろっている。逆指値ほか多彩な注文方法が利用できる上に、板発注が可能な高機能無料ツール「新マネックストレーダー」が進化中だ。日本株、米国株、先物取引についてロボットの投資判断を日々配信する「マネックスシグナル」も提供しており、スイングトレードに役立つ。
【関連記事】
◆AKB48の4人が株式投資とNISAにチャレンジ!「株」&「投資信託」で資産倍増を目指せ!~第1回 証券会社を選ぼう~
◆マネックス証券おすすめのポイントはココだ!~日本株手数料の低さ、ユニークな投資ツールが充実しているネット証券大手
マネックス証券の口座開設はこちら!

 

株主優待名人の桐谷さんお墨付きのネット証券!最新情報はコチラ!
ネット証券口座人気ランキングはコチラ!
NISA口座を徹底比較!はコチラ
株主優待おすすめ情報はコチラ!
優待名人・桐谷さんの株主優待情報はコチラ!

 

Special topics pr

ZAiオンライン Pick Up
[クレジットカード・オブ・ザ・イヤー2017]2人の専門家が最優秀クレジットカードを決定! 2017年版、クレジットカードのおすすめはコレ! おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カードは、 本当は“ゴールド”ではなく“プラチナ”だった!? 日本初のゴールドカードの最高水準の付帯特典とは? 高いスペック&ステータスを徹底解説!アメリカン・エキスプレスおすすめ比較
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
じぶん銀行住宅ローン 「アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」付帯サービスはプラチナカード顔負け!最強ゴールドカード 実力を徹底検証  アメリカン・エキスプレス・スカイ・トラベラー・カード 「アメリカン・エキスプレス」が誇る、高いスペック&ステータスを徹底解説!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

新理論株価で儲かる株
株主優待ベスト130
ふるさと納税ベスト86

1月号11月21日発売
定価730円(税込)
◆購入はコチラ!

Amazonで「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!


【株主優待ベスト130&新理論株価で買う株】
桐谷さん&優待ブロガー&ザイ読者が厳選!
 初心者も安心!株主優待ベスト130
失敗しない優待株の投資のワザ
●「優待+配当」利回りベスト30
少額で買える優待株ベスト30
権利確定月別の優待株ベスト 130
新理論株価まだ買える株68
年末までに駆け込め!ふるさと納税86
 3大カニマップ&寄附額管理シート付き! 
iDeCoつみたてNISAもこれが大事!
 騙されるな!投資信託選び10の落とし穴
●高配当&高成長の米国株ベスト12
地方上場の10倍株&佐川急便の投資判断
別冊付録!つみたてNISA完全ガイド

「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!

>>「最新号蔵出し記事」はこちら!

>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

Apple Pay対応のクレジットカードで選ぶ! Apple Payに登録して得する高還元率カードはコレ! 堀江貴文や橘玲など人気の著者のメルマガ配信開始! 新築マンションランキング
ZAiオンラインPickUP