田中 いきなり核心に迫ってもいいですか? 決算を誤魔化そうとする中小・オーナー企業の社長さんて意外といますよね。レベルがありますが、圧倒的に多いのは陳腐化した在庫を大量に抱えているケースです。社長は、いつか復活するだろうと淡い期待を抱いていますが、それで復活した会社なんてまずないわけです。そのような会社の社長に在庫を処理するように進言すると「そんなことしたら銀行から金を借りられなくなる」なんて返されたりします。石本さんは、そんなとき、どう対応されていますか?

石本 基本的に税理士としては税額を減らすことができるようなアドバイスはしやすいので、不良資産は税法に従ってきちんと会計処理しましょう、と伝えます。だけど、社長さんが処理してくれない、というケースもあります。「銀行からお金を借りるため、在庫は実在するし価値もあります」と言われてしまうと、会計監査を行う立場にはない顧問税理士の我々には、それでも在庫の実在性や価値の検証を無理強いして行うべき立場なのか。悩ましい問題です。
一方で、最近は「中小企業の会計に関する指針」という指針があり、この適用に関して確認事項を顧問税理士がチェックしサインをしたものを金融機関に提出することで金利や保証料等が優遇されたりするケースもありますので、積極的にこういう制度をご紹介して、きちんとした財務諸表を作成し、銀行との信頼を高めていく方向にシフトしていただくようにしています。

社長が税理士に相談する事トップ3

保田 では、そうした経営者からの相談事ランキングのトップ3というと、どんなに感じになりますか?

石本 意外と多くて3位くらいに入るのが「人事」の話ですね。社内の人事をどうしたらいいのか?という相談。あとは解雇、リストラの話、この辺は結構来ますね。

保田 オーナー企業の社長さんは社内に相談する相手がいないから、石本さんのところに来るわけですね。第2位の相談事は何でしょう?

石本 単なる愚痴の聞き役みたいなことが多いですよ(笑)。明確な答えをください、というより「あぁ。話を聞いてほしかったんだな」という感じです。私は類似業種の顧問先を多く抱えているため、「こういうとき、ウチみたいな会社は、一般的にどうしていますか?」といった質問をされることがありますね。「マーケティング施策を導入するタイミングは、いつが適切ですか?」といった感じの相談です。お金がかかるからでしょうね。

保田 石本さんのところに寄せられるいろいろな相談をデータベース化すればそれだけでケーススタディ集、つまり1冊の本もできるんじゃないでしょうか。