インドネシアでのパートナーの1つ「ペッカ」は女性家長が相互支援をすることを目的につくられた団体で、インドネシアの20州で600の女性グループを組織するNPO。ペッカは、現地の住人に認知、信頼されている団体で、こうした現地に根づいた活動をしている団体がいるからこそ、その場所でのテクノロジーを普及するというコペルニクのミッションを実行することが可能になっています。

なぜ日本企業は<br />途上国でイノベーションを起こせないのか?インドネシアのパートナー、ペッカと

 一方、ペッカ自体には、さまざまなニーズを解決できるテクノロジーを開発する専門性はありません。つまり、コペルニクのミッションである「テクノロジーの普及」は、企業とNPOのパートナーシップがあって初めて可能になるモデルなんです

 

「自転車×脱穀機」で農業の効率は上がる!?
――事例1 ベンチャー企業を育てるNPO

――企業とNPOなど、今までは別々に動いていた組織が手を組むことは増えているのでしょうか?

中村 こうした動きは、世界的にどんどん広まっています。イノベーションを起こすために、企業、政府、大学、NPO、一般市民が複雑に手を取り合っている例をいくつか見てみましょう。

 これ、何をしていると思いますか?

なぜ日本企業は<br />途上国でイノベーションを起こせないのか?

――自転車の荷台で……何をしているのでしょう……?

中村 これ、脱穀しているんです。自転車の動力で。途上国の多くの地域では、脱穀は手作業で行われていて、大変な手間と時間がかかっています。これを、自転車の動力をつかって、効率的に脱穀します。

――おもしろい製品ですね。自転車にこんな使い方があるとは……。

中村 これを発明したベンチャー企業を支援しているのが、イノベーションとテクノロジーを組み合わせた名前を持つイノテック(Inotek)。コペルニクのパートナーの1つで、インドネシアでの社会問題を解決するテクノロジーの担い手を発掘・育成(いわゆるインキュベート)しているNPOです。

 イノテックは、インドネシアの大学の教授や学生で社会的な問題を解決する発明をしている人を探し、その発明をビジネスとして立ち上げるまで、特許申請、ビジネスプランづくり、会社設立、会社への助成金・投資を組み合わせた財政的支援などの幅広い支援をしています。イノテックからは、自転車脱穀機のほかに、燃料効率のよい調理用コンロなども生まれています。ソーシャル・イノベーションを促進するために奮闘する起業家候補と、そうした人材を育てるNPOという今までにない形態のパートナーシップだといえるでしょう。