日本にいるより、海外に出たほうがチャンスは大きい

 グローバルスタンダードが叫ばれ、インターネットが登場して、世界はつながったかのようにも思えます。世界のルールはひとつだという価値観も広がっていますが、実はそうではありません。むしろ海外との違いが評価されるポイントであり、そうした違いが認められる世の中になってきているのです。

 今回の本で登場する多くのシェフやソムリエが言っていたのは、海外に行ったほうが勝負がしやすいということ。日本はレストランの数も多いし競争も激しい、それに比べればよっぽど、活躍できる可能性は高いというのです。
 そして、日本の文化ややり方が評価されればされるほど、さらにチャンスは大きくなるし、活躍の場もどんどん広がっていくでしょう。
 料理人をはじめとする、いわゆるクリエイターと呼ばれる人だけではありません。たとえば、営業だったりマーケティングだったり、サービス業だったり、何かを考えて物事を進めていく仕事をしているビジネスパーソンすべてに当てはまります。

 日本のネットビジネス界にはまだ、海外で通用する企業やサービスは現れていませんが、おそらく私は、ブレイクも近いのではないかと思っています。
 それには、まずは誰かひとり、ドーンと大活躍する人が出てくることが必要です。そうすると必ず、「あれ、自分にもできるんじゃないか」と思うフォロワーが現れる。

 野球の世界だって、野茂選手が出てくるまで、ものすごく長い時間がかかりました。それまで、メジャーで活躍した人はほとんどいないに等しかったのに、多くの選手があとを追って海外に渡りました。野茂選手が努力したおかげで、メジャーリーグの中で日本人に対するリスペクトが広がっていったからでしょう。
 野茂選手が出たことでイチロー選手、ダルビッシュ選手が、中田英寿選手が出たことで長友選手、香川選手、本田選手が続くといった流れを、いろいろな業界でつくらなければなりません。そして、活躍した人を表に出して知らせていくことが、これから海外へ行く人たちの参考になると思うのです。

 2010年代を迎えて、私はやっと日本人が本格的に海外に出ていく時代がやってきたと感じています。料理の世界では、日本にいる私たちがまったく気づかないうちに、ものすごいことが起きているのですから。
 スポーツ選手から始まり、料理人、そしてビジネスパーソンへ。この流れは加速していくだろうし、海外で活躍することは、どんどん当たり前になっていくでしょう。

 せっかくチャンスがあるのだから、それを生かしたほうがいい。これまで道を切り拓いてきた人たちがやってきたことやノウハウ、考え方をつかみとって、あとに続く人たちの希望になってもらえればうれしく思います。

~『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』はじめに より~

次回は3月28日更新予定です。


新刊のお知らせ

なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか四六並製/336ページ
定価1400円(+税)

本田直之『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』

Michelin France 2014年で、日本人シェフの星付きレストランは合計20軒に!
日本人は欧米にあわせるのではなく、元来もっている日本人のよさ、強みをいかして海外に羽ばたく時代がきた!

■どうすれば海外で活躍できるのか?
■いま注目されている日本人の強みはなにか?
■ビジネスパーソンはどのように応用すればいいのか?
世界で活躍するシェフ15人のインタビューと世界で活躍するために必要な34のスキルをまとめました。

フランス
◎パッサージュ53 佐藤伸一シェフ
日本人シェフとして初めて、フランスで二ツ星を獲得
「焦っても、ただやみくもになにかをしない」

◎Keisuke Matsushima 松嶋啓介シェフ
日本人最年少でミシュランフランスで一ツ星を獲得
「競争なんかしないほうがいい」

◎レストランソラ 吉武広樹シェフ
ミシュランフランス 一ツ星
「同じ土俵で戦わず、自分の強みで勝負する」

◎レストラン・ケイ 小林圭シェフ
世界的に有名な三ツ星レストラン「プラザアテネ」元スーシェフ
「選択肢が狭いからこそチャンスがある」

◎オ・キャトルズ・フェブリエ 新居剛シェフ
ミシュランフランス 一ツ星/トリップアドバイザー、リヨンで1位
「デメリットをメリットだと考えられるか」

◎ラ・カシェット 伊地知 雅シェフ
ミシュランフランス 一ツ星
「なこかい、とぼかい、なこよかひっとべ」

◎ジョエル・ロブション 須賀洋介シェフ
ロブション氏の懐刀
「発想を転換すれば、大変が大変でなくなる」

◎プティ・ヴェルド 石塚秀哉オーナーソムリエ
日本人オーナーシェフ初のミシュラン1つ星「レストランひらまつ」の元シェフソムリエ
「海外で得たものは、技術ではなく人間としての成長」

◎シャングリ・ラ ホテル パリ ラベイユ 佐藤克則ソムリエ
ミシュランフランス 二ツ星レストラン セカンドソムリエ
「自主的に動かない人間に棚ボタはない」

イタリア
◎オステリア・フランチェスカーナ 徳吉洋二シェフ
ミシュランイタリア三ツ星/「ワールド50レストラン」で世界第3位 スーシェフ
「考えろ、考えろ、考えろ」

◎ダル・ペスカトーレ 林 基就ソムリエ
イタリアでもっとも長く三ツ星を維持しているレストランのプリモソムリエ
「あえて困難な道を選ぶ」

◎マグノリアレストラン 能田耕太郎シェフ
ミシュランイタリアで日本人として2人目の一ツ星
「活躍するために必要なのは『強みとビジョン』」

スペイン
◎Koyshunka 松久秀樹シェフ
日本人として初めてスペインミシュランで一ツ星を獲得
「『アク』を持って生きよう、ナチュラルでいよう」

日本
◎レストラン カンテサンス 岸田周三シェフ
ミシュランガイド東京 フレンチの日本人オーナーシェフ唯一の三ツ星
「まわりがやらないからやらないという発想は間違い」

◎日本料理 龍吟 山本征治シェフ
ミシュラン東京で3年連続三ツ星/「ワールド50レストラン」日本料理で最高位
「もっとあるだろう、もっとあるだろうと思う」

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