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3月24日 18時0分
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賃金下落でデフレが始まったという怪しい考え - 村上尚己「エコノミックレポート」

2014年初から日本株の停滞が続いている中で、メディアでアベノミクス批判が増えていることを紹介した(3月14日レポート等)。これらはいくつかのパターンに類型できるが、最近目につくのが、「賃金下落が、日本のデフレをもたらした主因」という議論である。このロジックに沿うと、「デフレを退治するには、名目賃金が上がる必要がある。金融緩和を軸としたアベノミクス発動で、名目賃金(やインフレ率)は上昇しない」ということになる。

さらに発展させると、「日本銀行の金融緩和強化は、脱デフレに繋がらない。金融緩和では名目賃金は上がらず、実質賃金が下がるだけ」という主張にもつながる。2013年に起きた、景気回復・大幅な株高・円高修正・有効求人倍率上昇、などの成果を無視し、こうした怪しい議論が尽きないことに筆者は驚くばかりなのだが、金融政策とインフレ率の関係を理解できない方は、一生それができないということなのかもしれない。

「賃金下落が、日本のデフレをもたらした主因」と声高に掲げる人は、1990年代後半以降の日本で、賃金下落してから一般物価下落つまりデフレが始まった、という。ただ、それは経済指標を正しく読むことができないが故に生まれた誤解だろう。実際には、1995年から日本経済はデフレに陥っていた。その後、金融危機が起きた1997年後半から景気縮小圧力が高まり、名目賃金が大きく下がり、そしてデフレと低成長が深刻化した、というのが事実である。

つまり、デフレが先に始まり、それから名目賃金の下落が顕著になったわけだ。名目賃金低下をきっかけに、デフレが始まった、というのは事実ではない。グラフで示したように、消費価格指数(消費デフレータ)は1995年から低下が始まり、途中消費増税で上昇したがそれを除けば、下がり続けている。一方、名目賃金は1997年まで上昇し続けたが、1998年から下落に転じている(グラフ参照)。

賃金下落ではなく、バブル崩壊以降の経済縮小と超円高(それらをもたらした経済政策の失敗)によって、日本でデフレが始まった、ということである。デフレに陥るほど経済が停滞し、労働市場の需給が大きく悪化し、そして名目賃金が下落に転じた、のである。

金融政策の効果を認めたくない「不思議な人々」は、賃金が上昇しなければ、(金融緩和を強化しても)インフレにならない、とでも言いたいのだろう(2014年は、消費増税のおかげで実質賃金は大きく低下する)。しかし、グラフをみればわかるように、そもそも物価指数と名目賃金は多少のタイムラグがあるにせよ、ほぼ連動して動いている。

モノ以外のサービスの価格は、人件費によって大きく影響されるのだから、一般物価と名目賃金の連動性が強いのは当然だろう。この関係を踏まえれば、「賃金が下がったから、デフレが始まった」という議論は、実際には「何も言ってない」ということが分かるだろう。

実際に起きたことは、1990年代半ばまでの金融・財政政策の大失敗で経済成長率が劇的に下がり、それが故にデフレ(と名目賃金下落)が起きた、ということである。この筆者の理解が正しければ、妥当な経済政策がアベノミクスによって発動され、それが続けば日本経済はデフレから脱する。そして、それと同時に、名目賃金も自然に上昇するだろう。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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