「いまから会社に戻る。といっても、事務所は大阪や。新幹線で行かなあかん。切符代を用意せえ」
 保坂は突拍子もない要求に困惑した。
「お客様、ちょっと携帯を見せていただけませんか? もしかしたら、まだデータが残っているかもしれません」

 保坂の申し入れに対して、男性は声のトーンを上げた。
「なにをゴチャゴチャ言うとるんや! ほれ、見てみい!」
 保坂は、男性の携帯電話に登録されている番号を確認しようとした。ところが、データはなにも残っていない。
〈でも、どうもヘンだ。電話は正常に機能しているみたいなんだけどなあ〉

 不信感を抱いた保坂に、男性の怒号が飛んだ。

「切符代、どないするんや!」
「申し訳ありません。店長に相談しないと……」
「店長はどこや?」
「いま、外出しています」
「切符代ぐらい、レジに入ってるやろ! 早よせい、最終列車に間に合わんやないか! 出すのか、出さないのか、いまここで結論を出せ!」

 保坂は、思わずレジの中身を思い浮かべた。……

 こんなとき、どう対応すればよいかは『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』p176~179をご参照ください。