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3月26日 18時0分
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みんなのうた - 広木隆「ストラテジーレポート」

節分底 彼岸底

歌人の穂村弘に憧れて、下手な歌を詠んでは日経新聞の歌壇に投稿している。無論、採用されたことは一度もない。

歌は恋の歌に限る。万葉の古(いにしえ)から、数多く読まれてきたテーマである。

家にありし櫃(ひつ)に鑠(かぎ)さし蔵(おさ)めてし 恋の奴の つかみかかりて

穂積親王

(家にあった櫃にかぎをかけて、厳重にしまっておいた恋の奴が、いつのまにかぬけ出して、私につかみかかって、私を苦しめることだ)

秋の田の 穂向きの寄よれる こと寄りに 君に寄りなな 言痛かりとも  

但馬皇女

(秋の田の穂が同じ向きに向くように、ただひたむきに君に寄り添いたい。たとえ世間のうわさがひどかろうとも)

穂積親王と但馬皇女は、いわゆる不倫の関係にあった。メールもケータイもない時代、彼らの苦難を乗り越えても愛し合う情熱は、いかばかりであったのかと思う。

僕も恋の歌を詠んでいる。ところが僕が詠むと、恋の歌というより、思いっきりただの下ネタになってしまう。

省かずに ちゃんと継ぎなよ 「おまえとは」 「久しぶりだ」と 吐いた言葉に

蘇る 形状記憶 したとおり あなたは横で 寝返りをうつ 

次どこに 旅行しようと 問うあなた どこでもいいわ 出張じゃなきゃ

これは、ベッドで女がつぶやいた言葉を書き留めたもの、そのままである。「歌」ではない。まだ「歌」になっていない。「歌」になる何歩か手前の、むき出しの素材である。これではボツが続くのも無理なかろうもん(九州弁、特に意味はない)。

ちょっと路線を変えてみようという気になった。と言うか(ギャル語では「てゆ〜かぁ⤴」)、もう、歌でも詠まなきゃやってらんないほど、馬鹿馬鹿しい相場になっちゃっているからである。

これはどうだろう。

東風吹けど 節分底に 彼岸底 三寒四温 春な忘れそ

(超訳: 春の東風が吹く今日この頃だが、梅の香が飛んで来るのよりもPM2.5の飛来のほうが気懸りだ。相場格言では「節分天井、彼岸底」というものの、今年の相場は節分も安値、彼岸も安値ではないか!しかし、少しずつはよくなるのだろう。楽観と悲観を行きつ戻りつしながら前に進むしかない。四つ進んで三つ戻る。特に米国の金融政策についての市場の解釈は「行きつ戻りつ」を繰り返すだろう。そんなマーケットではあるが、どうか忘れないでほしい。春という季節が来ることを。)

彼岸も過ぎて、そろそろ年度替わりである。年度が替われば、さすがにこの冴えない相場の地合いも変化するだろうと思う。相場格言では「小回り三カ月」という。三カ月は相場の重要なサイクルのひとつ。年明けから三カ月、ずっと軟調地合いが続いてきた。日柄的にも潮目が変わってよいころだと思う。そうなれば、節分底、彼岸底もWボトム形成で、底打ち確認となるだろう。

昨年9月の落ち日との比較

今日が権利付き最終売買日、明日から実質新年度相場入りだ。まずは100円程度の配当落ちを即日埋めることができるかが注目されるところ。前回の大きな配当落ち日は昨年9月下旬。その日の日経平均は67円安の1万4553円で寄り付いたあと下げ幅を拡大、14410円まで下げる。そこから切り返し、結局、日経平均は14799円と高値引け。日中値幅が389円もある大波乱の配当権利落ち日だった。

上で書いた日経平均の値、1万4400円、1万4500円、1万4700円などはすべて今の相場の重要な値だ。現在(25日終値現在)、1万4400円台にある日経平均はまさに1万4500円の節目を終値で上回ることができるかが目先の焦点になっている。この水準では200日の移動平均が重石となっているようだ。それを超えても次には25日移動平均や一目均衡表の雲の下限が上値抵抗として意識されるだろう。それらは1万4700円台にある。

こう見てみると、今の相場水準は半年前とまったく変わっていないことに気付く。この半年はいったいなんだったのか。

とは言え、この半年という時間が流れる過程で、日本株の投資環境は確実に変わったことも事実である。まず為替の水準が違う。半年前、ドル円は100円を割れていた。昨年9月の落ち日にはドル円が99円にタッチしたというだけで日本株買いの勢いが増したものである。今ではさすがに100円割れはかなり薄いシナリオとなっている。
そしてなんと言っても業績が違う。半年前は日経平均の1株当たり利益は900円強だった。今では1000円を超えている。結果としてバリュエーションが大違いだ。当時は日経平均の予想PERは16倍強であり、結構いっぱい、いっぱいの感があった。それに対して現在は14倍前後である。

日経平均は先週末の終値が1万4224円。この時点のPERは13.9倍である(日経予想ベース)。この予想PERの14倍割れという水準が過去の相場のどのあたりに相当するかと言えば、それは日経平均が1万3000円を割って昨年来安値をつけた昨年6月よりも安く(その時でさえ14倍は割っていない)、このアベノミクス相場が始まる前、日経平均が8000円台にあった時まで遡る(グラフ1)。現在の日経平均の水準は、1株当たりの利益見合いという評価では、8000円台相当、アベノミクス相場の振出に戻るところまで下げていると言えるのだ。



そして年度が改まれば、「今期」という言葉は2015年3月期を指す。15年3月期の業績基準では一層割安感が増すだろう。これまで決算前で動きにくかった機関投資家も、新年度に入れば動きやすくなる向きはあるだろう。年度替わりのタイミングで割安感に着目した押し目買いが増えてくるのではないか。

米国金利の上昇は日本株にとって好材料

外部環境にも大きな変化がある。米国はQE(量的緩和)を縮小して「出口」の方向に向かっている。これまではQEが終わっても実質ゼロ金利はずっと長く続く、金融緩和の長期化が市場のコンセンサスだった。しかし、先日のFOMCを境に、市場のフォーカスは「利上げ」に切り替わった。QE年内終了、来年半ばには利上げというのがメイン・シナリオとなりつつある。

こうした状況では無論、米国金利は今後上昇基調となるだろう。しかし、米国金利の上昇は日本株にとって好材料である。これは僕がマネックスのチーフ・ストラテジストに就任して初めて書いたストラテジー・レポートで述べて以来、再三繰り返してきたことである。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』220ページにもグラフを掲載している。



説明は不要だろう。米国金利の上昇はドル高要因だからである。日本は追加緩和が必要と叫ばれているような状況だ。日米の金利差は拡大する方向と見て、まず間違いないだろう。日本の経常収支の悪化、消費者物価指数の上昇に表されるインフレ率の高まりなど為替を動かす他の要因、すなわち資金フロー、インフレ格差(購買力平価)の観点いずれも円安を示唆している。これに最も直截的な金利差という要因が明確になってくれば、再度為替市場でも円安が進むだろう。

米国金利と日本株の相関が高いのは為替を通じての要因だけではない。米国の金利上昇というのはストレートに米国景気の好調さの現れであり、世界一の経済大国である米国の景気が良いというのは、とりもなおさずグローバル景気が良好ということである。日本株というのは全体として「グローバル景気敏感株」と見なすことができる。いまや上場企業の売り上げの半分は海外での稼ぎである。「中国景気減速で来期の業績の伸びは鈍る」という声が市場の一部にあるけれど、それは世界全体のなかで、あえて伸びが鈍る要素にスポットライトを当てているようなものだ。

ものごとには常に二面性があるということも繰り返し述べてきたことのひとつである。世界一の経済大国である米国が利上げを模索する ― そのことには良い面と悪い面、両面あるのはもちろんである。だが、もっとプラスサイドを評価しても良いように思う。

実は日本株のバリュエーションが割安だとか、日本株と米国金利の連動性が高いなんてことはみんな知っていることである。みんな知っていて、誰もが歌える「みんなのうた」だ。なのに、誰も歌おうとしない。

景気は「気」からである。経済も相場も「気」からである。季節が移ろい、年度も改まる。新たな気分、フレッシュな気持ちになる時期だ。そうした「気」の変化が、相場の潮目を変えてくれることに期待しよう。

春めいて暖かくなれば、ひとの心も朗らかになろう。歌のひとつも口をついて出るようになれば、しめたものである。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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