新住民と旧住民が混ざり合う接点を
どうつくっていくべきか?

吉里 新住民と旧住民が「具体的にどこで接点を持つか?」が重要ですよね。僕は一昨日、鹿児島の鹿屋(かのや)市にいたんです。そこで、地元の人がいる銭湯に連れて行ってもらったんですが、脱衣室で「ここ、体洗わないで入ると、メッチャ怒られるから気をつけ」って、地元のおっちゃんから言われたんですよ。

「当たり前じゃないですか」って言ったんですけど、石鹸を持っていなかったので、ものすごい念入りに洗ったんです。怒られるっていうし。でも、風呂場に入っていったら、「あんちゃん、洗ってないやろ!」と、おっちゃんから言われるんですよ。「メッチャ洗いました!」と言ったら、「石鹸つけてなかったやん」って言われて……もう完全に見られてるんですよ(笑)。

 仕方ないから、おっちゃんから石鹸を借りて、もう一回これ見よがしに泡立てて体を洗って入るんですけど、今度はお湯がメッチャ熱いんですよ。47度くらいあって。さすがに入れないでいたら、そのおっちゃんが大笑いして「あんた、こっちのほうがもっと熱いよ」なんて教えてくれてたり、そんなこんなで話をしているうちに、いつの間にすごく仲良くなるんですよね。

山崎亮×吉里裕也×馬場未織<br />これからの豊かな暮らし方について語ろう【前編】

 例えばですけど、銭湯みたいなところって、接点をつくる場としては重要じゃないですかね。「東京から来た」ってわかると、みんな結構教えてくれるし、「なぜここのお湯がいいのか」みたいな話もしてくれて、どんどん関係が近くなっていくんですよね。最後は、その地元のおじさんも「若い人がこういうふうにいるといいよね」なんて言ってくれたりして。

馬場 へー、そうなんだ。まぁ、若くはないけどね(笑)。

吉里 若くはないね(笑)。

山崎 いや、若いですよ。メッチャ若いですよ。僕らの世代が集落に行ったら、本当に奇跡のように言われますよ。だって、一番若い人が75歳というのがざらですから。

馬場 そうそう。お嬢さんって言われますからね。

山崎 そうですよ(笑)。

馬場 でも、本当にそうなんですよね。何かすれ違っているようだったり、違うなと思ってたりしても、どこかで接点があると、キュッと入っていける。私もそうだったかも。

吉里 きっかけみたいなものがあったの? 祭りとか。

馬場 お祭りはね、実は去年初めて参加したんですよ。うちの集落はとても小さいので、ここ7年間はお祭りをしていなかったんですけど、「冥途の土産にやろう」ということで実現して。大半は隣の集落の青年部の人で、私たちの集落は62歳以上の人しかいない(笑)。

 それで、一日中、お神輿というか屋台を引いて、練り歩きながらお酒を飲むんですね。最初は知り合いも少ないし、子どもたちに「早く来なさい」「そこ、入っちゃダメよ」とか言いながら恐縮してたんだけど、飲んでると、なんかもう、だんだんどうでもよくなってきて。でも、酔ってくだけたところで、「あ、別に話せるじゃん」とか、「何をこだわってたんだろう」みたいな瞬間があると、一気に溶解するんですよね。

吉里 子どもの存在って大きくないですか? そういう垣根を軽々と超えますよね。

馬場 大きいですねぇ。子どもなんて、奇跡中の奇跡ですからね。「いやぁ、久しぶりに子どもの声を聞いたよ」とか、本当によく言われますよね。ただ、子どもに甘えてられないところもあるんですよ。子どもがワーッと入ってきたことで、「ありがとうございます」とか言いながら関係が溶解する入り口には立つんだけどね。それとは別に大人のやるべきこともあると思うので…。

(後編に続く)

※この記事は2014年3月11日に代官山 蔦屋書店(旅行フロア)にて行われた「『週末は田舎暮らし』刊行記念トークイベント 馬場未織&山崎亮&吉里裕也」をまとめたものです。