「よくわからない」という感覚が不可欠である

 多くの経営学者は、この記事で述べたような複雑性をもはや前提条件として捉えており、ことさらに議論することはありません。

 そのこともまた、そうした事情を知らない人から見れば、「よくわからない」「科学とは呼べない」という感覚につながるのでしょう。

 ただ、「よくわからない」という感覚を持ち続けることは、苦しいことかもしれませんが、それが本当の考えるという行為、すなわち、社会科学を取り扱ううえで、唯一であり絶対的な行為につながるのも事実です。

 社会科学の研究の本質とは、自己啓発書籍のように「5つのポイントを抑えれば理解できる!」という“軽いノリ”のものではないのです。今回も、「経営学はこうだ!」という安易な答えを示すことはしません。思考と議論の要点をお伝えする程度にとどめておきます。

 本当は私も、軽いノリで「こうだ!」と叫びたいのですが……(笑)。

 それでは、また。

ハーバード、スタンフォード、オックスフォード…日本でも常に注目を浴び続けている海外の大学はある。しかし、もちろん、海外にも無数の大学があり、すべてが順風満帆とは言えない。第13回は、海外のトップ校と日本の大学を冷静に比較して、「国際化」に苦しむ海外の大学の実情も紹介する。次回更新は、4月14日(月)を予定。


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第12回<br />なぜ、経営学はこれほど誤解されてしまうのか?<br />自然科学との対比で社会科学の本質を読み解く

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