ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
第2次リストラ時代(!?)に贈る 私が「負け組社員」になった理由

幻と消えた内部告発制度・・・。
「抵抗勢力」に潰された、監査役の社内改革

――次期社長候補と対立し、包囲網を作られた武藤氏のケース

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第9回】 2009年2月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 「会社をよりよきものにしたい」――会社員ならば誰もが思うこと。役員にもなれば、その思いは一段と強くなる。そのためには、痛みを伴う「改革」を決断しなければならない時もあるだろう。しかし、その思いを行動に移すときには、周到な準備が必要になる。それを怠ると、大やけどをすることになりかねない。

 今回は、監査役として、会社の風通し良くするための「社内改革」を推し進めようとしたものの、抵抗勢力たちに包囲網を作られ、その計画を握り潰されてしまったある役員のケースを紹介する。

------------------------------------------------------------------------------------------------
■今回の主人公
武藤 芳樹 仮名(56歳 男性)
勤務先: 従業員数300人の中堅飲料メーカー。首都圏に工場を2つ持ち、営業所は10ヵ所程。きめ細かな営業により、順調に業績を伸ばしてきた。しかし、ここ数年は売上が伸び悩み、社内では沈滞ムードが漂っている。
------------------------------------------------------------------------------------------------

(※この記事は、取材した情報をプライバシー保護の観点から、一部デフォルメしています)

週刊誌にスクープされた
「社長の不倫」

 “スクープ! 躍進するA企業の社長室で、不倫発覚!”
 “経営者のモラルハザード極まれり!”

 役員室の横にある大会議室で、専務の高原(59歳)と監査役の武藤は、発売されたばかりの週刊誌の見出しを見入る。記事にあるのは、この会社の社長(61歳)と広報室に勤務する女性(39歳)との恋愛関係。つまりは、不倫である。

 「社長が地方に出張するときには、この女性が決まって同伴をする」ことや、「2人だけで社長室に3時間以上もこもっていた」などと報じてある。社内では、この噂は以前からささやかれていた。

 役員の高原や武藤は、それを承知していた。高原は専務取締役であり、「No.2」のポジション。監査役である武藤は、このような場合、相手がたとえ社長であっても厳しく物申さなければならない立場にある。

 しかし、問いただすことはできなかった。ほかの6人の役員も同じく、社長には何も言えなかった。

 社長は4年前に役員に昇格し、2年前にトップに上り詰めた。温厚な性格であり、人望は厚い。だが、最近は「ワンマン経営」と陰口を叩かれるようになっていた。

 1時間近くした後、武藤が一段と小さな声で話した。

 「この問題は、社長とあの女性だけの問題ではないと思います。私たち役員も、見て見ぬふりであった以上、罪があります」

 武藤はこう言うと、黙った。高原の考えを知りたかったからだ。

2人の役員の
静かなぶつかり合い

 しばらく間をおいた後、高原が尋ねた。

 「何を言いたいの?」

武藤は、ゆっくりと答える。

 「この会社は、風通しがよくないと思うんです。互いに脚を引っ張る体質が隅々まで浸透しています」

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


第2次リストラ時代(!?)に贈る 私が「負け組社員」になった理由

会社から冷遇され、気がつくと「負け組」となってしまった人たちを毎回取材。彼らの実体験を振り返ることで、企業の冷酷さだけでなく、自己防衛できなかった敗因を分析。第2次リストラ時代で生き残る術を探る。

「第2次リストラ時代(!?)に贈る 私が「負け組社員」になった理由」

⇒バックナンバー一覧