稲嶺進・名護市長独占インタビュー【後編】<br />「基地問題の本質は、沖縄への構造的差別にある」一部埋め立て予定の辺野古の海と大浦湾。憩いの場である平島・長島を映した「市民が一番残したい名護の風景」だ(名護市提供)
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「辺野古移設阻止」という名護市民の思いとは反対の方向に、基地問題は進み始めている。昨年末、仲井真弘多・沖縄県知事が基地建設のための辺野古埋め立て申請を承認し、政府は移設に伴う調査を今夏には開始予定で、しかもそれに対する反対行動を想定し、米軍基地や施設への侵入や情報収集などへの罰則を定めた刑事特別法の適用を調整しているという。なぜ1月の市長選で明らかになった名護市民の民意は無視され、沖縄に基地が置かれ続けなければならないのか。その背景には、「沖縄への構造的差別がある」と稲嶺進・名護市長は主張する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原英次郎)

稲嶺進・名護市長インタビュー【前編】「沖縄はもう基地の恩恵を受けてはいない」

名護市民の民意を無視して強行すれば
民主主義を否定することにならないか

――知事が年末に辺野古埋め立て申請を承認し、今後、移設に向けた調査や工事が行われようとしています。そうした危機的状況のなかで、今後、民意を反映させるため名護市長としてはどのような対抗策が考えられますか?

稲嶺進・名護市長独占インタビュー【後編】<br />「基地問題の本質は、沖縄への構造的差別にある」いなみね・すすむ
沖縄県名護市長。昭和46年琉球大学法文学部卒業。名護市役所採用の後、企画部企画調整課長、総務部長、平成14年から名護市収入役、平成16年から同教育長を歴任。平成22年「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らせない」を公約に掲げ名護市長に当選。昨年12月に沖縄県知事が辺野古埋立を承認する中、1月19日に行われた同市長選挙では「すべては子どもたちの未来のために すべては未来の名護市のために」の公約を掲げ、基地推進派との一騎打ちを制し4000票以上の大差をつけて再選。趣味はマラソン。完走は16回を誇る。
Photo by Toshiaki Usami

 まず、埋め立て許可権限は県知事が握っています。埋め立ての許可が出ますと、国は次の段階に移ることができ、地質の調査をしたり、埋め立ての事前の作業を行います。その際、名護市の施設を使わなければ作業がうまく進まない部分があります。

 例えば、車の往来のために市道を使う、あるいは海上で作業する場合です。すぐ隣に漁港がありますから、例えば漁港を使って資材を運んだり、作業ヤードを造るには、市長に漁港の管理権がありますので、市長の許可や同意手続きが必要になります。私は、それらの作業が埋め立てを前提として行われるのならば協力はできませんということを今申し上げているわけです。

 ただ、それ以前に民主主義国家として先の市長選で民意(辺野古移設反対)がはっきり示されています。選挙は民主主義の社会では一番大事な表現の方法だと思うんです。そこで出た答えを無視して移設を強行するのは、自ら民主主義を否定することになるのではないでしょうか。

 従ってまずは名護市民の民意を重く受け止めて作業も含めて移設を凍結する、別の方法を考えるなど、民意を汲み取るのが民主主義国家でしょう。それでもなおと言うのであれば、私は市民の財産や安全を守るために市長に与えられた権限を行使せざるを得ません。