「捜査権があったら、どれほど楽なことだろうか――」

 日々の取材活動で行き詰った時など、ふと、こう思うことがある。もちろん権力を駆使しての取材など、ジャーナリズムの世界ではあってはならないルール違反だということは百も承知している。だが、取材記者ならば、一度や二度は、同様の考えに陥った経験があるはずだ。筆者もその例に漏れない。

 真相に迫れば迫るほど、取材対象者は真実を隠蔽し、自己防衛本能を強く働かせる。とりわけ社会的地位が高く、自身の名誉を守らなくてはならない人物ほど、その傾向が強いように思われる。政治家や経営者、高級官僚などが好例だろう。

証人喚問では刑事追訴に
関わる発言は拒否できる

 月曜日(10月28日)、守屋武昌・前防衛事務次官の証人喚問が行われた。

 証人喚問は、当然、取材活動よりもずっと権限のある国政調査権に基づいて実施される。だが、国会中継やニュース報道でその様子を観ていた読者の中には、歯痒い思いをされた方も少なくないと思う。

 それはある意味で当然だ。証人喚問では、証人は、刑事訴追に及ぶ可能性のあると思われる発言を拒否できる。国会には「捜査権」は存在しない、守屋氏はそれを熟知した上で喚問に臨んでいたのだ。

 週末、弁護士との最終打ち合わせを終えた守屋氏は、戦術として、

1.ゴルフ接待などの「公務員倫理規定違反」は、積極的に認める。
2.贈収賄などにつながる質疑については一切認めず、自身の発言も行わない。

の2点を確認しあった。