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トヨタが満を持して投入した「iQ」
真の狙いは欧州での“セット販売”!?

週刊ダイヤモンド編集部
2008年10月24日
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トヨタ「iQ」
トヨタ自動車の渡辺社長と新型車「iQ」

 「まったく新しいコンセプトのクルマ。新しいジャンル、新しいお客さんを開拓できれば良いな、という気持ちがある」。

 トヨタ自動車の渡辺捷昭社長が、これほどの“強い期待”を込める新型車が登場した。
 このクルマこそ、「iQ」である。iQの特徴は、「パッケージ革命」(渡辺社長)という表現があるように、超小型ボディに4人乗り(トヨタの推奨は、大人3人に子供1人)を実現させた構造とデザインにある。

 全長は3メートルにも満たないが、運転席と助手席部分の室内幅は「マークX」と同じで、快適に座ることができる。最小半径は世界最小レベルの3.2メートルと小回りが効き、走行燃費が1リットル当たり23km、9つのエアバッグも装備。もちろん、エンジンや車台も新設計。

 再度、渡辺社長の言葉を借りるなら「いろんなことに配慮したクルマ」。トヨタ社内ではレクサスブランドでの販売も検討されただけあって、小さいながらも、安全、環境(燃費)、居住性などの良さを“てんこ盛り”したクルマ、といえるだろう。

 ライバル車種は「ない」と、トヨタ関係者はいうが、ボディサイズから見て、軽自動車やメルセデス・ベンツの「スマート」が比較対象になるだろう。

 肝心の価格は、140万円から。通常の軽自動車よりも高いが、「スマート」はもちろん、ハイグレードタイプの軽自動車――スズキ「ワゴンR スティングレー」の最上級車種の価格(約167万円)よりは安い。正直言って「微妙な価格」(業界関係者)だ。

 そのへんの微妙さは、日本国内で2500台という月販目標台数を見てもわかる。「ヴィッツ」の約1万台(月販)という国内販売台数に比べたら、かなり控えめである。「最初の数ヶ月くらいは物珍しさで売れると思うが、その後は予測不能」(トヨタ系ディーラー)。

 もっとも、業界内では、トヨタがiQを出した真の目的は、「日本国内よりも、むしろ、欧州でのマーケティング戦略にある」(別の業界関係者)との見方もある。

 iQは2009年1月にも欧州での販売も予定しているが、安定期での目標販売台数は約40ヵ国で月6000台とかなり控えめ。なのに、なぜ、「欧州が狙い」と言われるのか。その理由は明白だ。

 将来、欧州で導入される排ガス(二酸化炭素)規制への対応である。欧州では、2012年以降にも1km走行当たりの二酸化炭素排出量が平均130グラムという基準値による新規制の導入が検討されている。問題なのは、この規制の基準値が会社(あるいはグループ)全体の平均値で規制される、という方向にある点だ。つまり、自動車メーカーは二酸化炭素排出量の多い中・大型車だけの販売では目標値をクリアできないため、二酸化炭素排出量の少ない超小型車やハイブリッド車などを販売し、会社(グループ)全体で販売するクルマの二酸化炭素排出量の平均値を引き下げる必要がある。

 具体例を挙げるなら、大型高級車を販売するメルセデス・ベンツが手間ばかりかかって利幅の薄い超小型車、スマートを絶対に手放さない理由もそこにある、といわれる。実際、スマートのディーゼル車の場合、二酸化炭素排出量は88グラム。内燃機関では世界最小だ。

 iQの場合、欧州向けのマニュアル仕様車の場合、わずか99グラム。じつはガソリン車では、スマートの103グラムよりも少ないのだ。

 むろん、トヨタにとっては「新ジャンルのクルマに挑む」という技術や企業姿勢のアピールという面も大きいだろう。だが、「欧州で利幅の大きい中・大型車を売るためには、超小型車の販売が不可欠」という余儀なくされる“セット販売”の現実を鑑みた側面があるのも間違いないだろう。

 (『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)

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