テレビ番組はスポーツものを除き、いったん録画して翌日以降に再生して視聴することにしている。CMをスキップできるからだ。ただし、世間知に疎(うと)くなるといけないので、CMについては早送りすることが多いのだが。

 2014年3月に放映された、コカ・コーラとペプシの比較CMには、さすがに驚いた。日本の飲料メーカーや食品メーカーでは、同じCMは制作できないだろうなと。

 筆者は天邪鬼なので、あのCMを見てからは何となく、コカ・コーラ「ゼロ」を買ってしまっている。少なくとも筆者には、逆効果になったようだ。

 この性格は、本連載を担当するようになってから、磨きがかかるようになってきた。「磨きがかかる」は、どちらかというと良い意味なのだろうが。

 一度、好奇心を抱いてしまうと、「何故なのだろう」「それは違うのではないか」と探求する気持ちが押さえられなくなる。

 先日、『クルーグマン・ミクロ経済学』197ページにある「落とし穴」を読んでいて、天邪鬼の性格が頭をもたげてしまった。「総費用は常に増加するので限界費用も増加するという誤った結論に至りやすいからだ」と記述され、「総費用と限界費用の動きは逆にもなりうる」と記述されていた。

 それを読んで「う~ん」と腕組みをしてしまったのである。

 総費用は常に増加するが、限界費用は増加(正確には「逓増」)することもあれば、減少(正確には「逓減」)することもあることを、クルーグマン教授は指摘しているわけだ。

 ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授の著作に対して、異議を唱えるのは恐れ多い。しかし、筆者のような実務家の立場からすれば、クルーグマン教授の説明には合点がいかない。

 これは天邪鬼かどうかの問題ではない。米国の企業がどうなのかは知らないが、少なくとも日本の上場企業の有価証券報告書に基づいて「実証」してみると、経済学者が説く「理論」は現実を無視した観念的空想論であることがわかる。以下、それを証明してみよう。