驚愕の選挙分析!パターンがわかれば未来も予測できる

琴坂 サイエンスをやっている人たちが、彼らの想像の領域を超えたところで価値を出していくことは、できると思いますか?

安宅 できると思うよ。ただし、インターパーソナル・スキルとプロジェクト・マネジメント、この2つが非常に重要だと思います。

琴坂 その2つは意識的にトレーニングしているんですか?

安宅 はい。たまに僕がプロジェクトをやっているんですよ、直接。基本的には社内の人材だけが対象です。そうでないと意味がないと思います。特殊訓練を受けてきたわけではない、普通の人を育て上げられなければ、何にもならない。

琴坂 普通の人というのは?

安宅 すでにいる社員のこと。育たないときもあるけど、少なくとも、手を動かして何かをやる人までには十分育ちますよ。たとえば、僕は他にもマーケットインサイト(market insight)の部隊を統括しているけど、そこはすごいですよ。おそらく、日本で最もインターネットの利用を理解しているチームの1つだと思う。そこは、自分がゼロから育て上げたと言っていいくらいのチームです。

琴坂 選挙の分析などをやっている部隊とはまた別の部隊ですか。

安宅 別です。ただ、その分析部隊にもそのインサイトのメンバーが何人か入っています。

 選挙分析というのは、ビッグデータレポートだよね。あの活動は、ネットとリアルは関係があるようでないような気もするし、なんだかわからない、だからこそつなげたいね、ということで始まりました。

 たとえば、2012年末の衆院選を例に挙げると、横軸に検索量、あるいはFacebookとTwitterの党別投稿量を取って、縦軸に党別得票数を取ると、おそろしいほどきれいな相関が見えました。

琴坂 それはかなりおもしろいですね。

安宅 そう。候補者単位でもバズ量の上位の3分の1を占めるような人だと得票数で圧勝するか、逆に当落ラインを割るぐらいになる。バズ量が真ん中くらいだと、当落線上に並んでいるとか、比較的わかりやすい関係が出ます。地方も同じ。

 当選する人と落選する人で、ネット上で同時に検索されていることも全然違う。勝っている人は街頭演説などの直接的な政治活動が見られていて、負けている人についての関心は、画像などの基本的に下世話な情報が顕著だった(下図参照)。

特別対談 <br />脳科学の視点で読み解くビッグデータの意外な構造 <br />領域を超える発想で、より深い理解にたどり着く<br />【ヤフー株式会社CSO・安宅和人×琴坂将広】出典:Yahoo!検索スタッフブログ. 2013-12-28. "衆議院議員選挙とYahoo!検索の驚くべき関係 - "Yahoo! JAPANビッグデータレポート" -", Yahoo! JAPAN, http://searchblog.yahoo.co.jp/2012/12/yahoobigdata_senkyo.html, (accussed 2014-4-10).
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これらの結果をまとめたレポートは、とても注目を浴びました。2012年12月28日にネット上に結果を公表して、正月3日間はずっと「はてなブックマーク」のトップエントリーの1つだったんですよ。

琴坂 いや、それは本当におもしろいです。

安宅 ありがとう。このレポートを出したあと、2013年の参院選では、いろいろやってみた結果、普通は幅を出した予測を公表するものなんですけど、うちは予測の幅ゼロで、ピンポイントの予想で公表することにしました。

 それを比例区と選挙区の両方でやった結果、比例区では、公明党以外はほぼ正解。選挙区も、政党に支持されていない人が当選した岩手と沖縄は政党ベースの予想だったので外すしかないが、複数選出を行った16選挙区のうち13区、47都道府県中42で完全な正解でした。

 結果論として言うと、出口調査的なアンケートを用いたわけでもないのに、主要メディア内では日本一正確な予測をしたんですよ。

琴坂 こうなると、投票率は上がらなくていいのかなとも思ってしまいますね。極論を言うと、未来には、投票率がゼロでも、民意を反映した当選者を統計的に選べるかもしれない(笑)。

安宅 いやいや。ただ、未来といえども、過去の情報からパターンを見出だせば予測は可能という話だと思います。もちろん、実際はいろいろと課題がありますけどね。