円相場を動かす次の材料は何か。外国人投資家の問い合わせはもっぱら、日本銀行の追加緩和、公的年金の株式や海外証券の買い増し、法人税減税、アベノミクスの成長戦略「第三の矢」、消費税増税と景気の先行きなど、日本の要因に関するものが多い。

 ところが実は、ドル円相場の動因としては米国景気のほうがはるかに優勢だ。そう説明すると、きょとんとされる。

 米国経済が不振なとき、日銀が追加緩和しても、安倍政権がどのような戦略を出しても、米国由来のドル安・円高という逆風を押し返すことは難しい。逆に米経済が好調なら、ドル高・円安の追い風に乗って、日銀の金融政策やアベノミクスという日本側の自助努力も報われ、それがまた政策の信認を増すという好循環を期待できる。

 特に米雇用情勢はここ何年もドル円相場を動かす鍵であり続けている。リーマン・ブラザーズの破綻を経て、金融不況にあえいできた米経済がどう自律回復していくかを測る上で、雇用の改善が経済的にも政治的にも最も重要視された。FRB(米連邦準備制度理事会)は超金融緩和をどう拡充し、いずれどう幕引きするかの尺度として雇用統計を注視し、市場は雇用統計の中でも非農業雇用者数の月次増減に焦点を当ててきた。