株式レポート
4月14日 18時0分
マネックス証券

日本株、底入れを探る機運 / さよなら村上さん - 広木隆「ストラテジーレポート」

下げ止まりの兆し

よく言えば、さすがに少しは意地を見せた、というところだろうか。週明け14日の日本株式市場は下げ渋る動きを見せた。先週末のNYダウ平均が143ドル安と続落、シカゴCMEの日経平均先物が1万3900円という外部環境のなか、TOPIXは売り一巡後反発し大引けの3分前までプラス圏で推移していた。トヨタが一時200円近く上昇する場面があった。三菱UFJも3%高となる場面があった。しかし、終値では下げに転じ7日続落。やはり、上値が重いと言うべきか。それでも前述のトヨタ、三菱UFJ、JR東日本、三菱地所、KDDI、ドコモ、日立、JTなどの健闘によってTOPIXコア30は7日ぶりに上昇で終えた。実は、先週末からローソク足は陽線となっていた。

主力の大型株だけでなく、個人投資家に人気の新興市場銘柄も下げ止まりを見せるものが出始めた。ジャスダック市場のクルーズは小幅ながら続伸で終えた。スマートフォン向けゲーム「モンスターエッグアイランド」を米アップルの「iOS」搭載端末向けに提供を始めたとの発表を材料に、先週末の株価は15%高の急伸。週明けの今日も朝方は買いが先行し、午前の取引では一時9%あまり上昇していたが、さすがに利益確定売りに押された格好だ。それでもプラスを維持して引けたことは明るい兆しだろう。

日経平均は一時1万4000円の大台を回復する場面があった。1万4000円は心理的かつバリュエーション面での重要な節目である。それだけにその水準を下回って引けた先週末の場味は非常に冴えないものだった。今日も49円安と続落だから、さらに冴えない。まあ、今日の下げはファストリとソフトバンクで54円押し下げられているから、実質的にはほぼ横ばいに近いイメージだけど。

バリュエーション面の割安さは支えになるか

週末の日経新聞が報じたように1万4000円割れの水準ではPERは13.70倍。野田前首相が衆院解散を表明した2012年11月14日(13.58倍)以来の水準まで切り下がったわけで、それはすなわちアベノミクス相場の出発点まで戻ったということである。少なくとも利益見合いの株価水準という意味ではアベノミクスの「完全否定」。明らかに売られ過ぎであろう。

但し、2015年3月期の業績見通しが不透明であればバリュエーション指標の有効性は薄れる。ロイターは、日本株の急落は、2014年度の「減益シナリオ」への警戒感が一因と報じた。消費増税や新興国経済の減速による影響により、国内企業業績が圧迫されるとの見方が広がっていると伝えている。そして、これまで想定外だった「減益シナリオ」が現実味を増したのは、ファーストリテイリングが示した減益予想も一因だという。そのファーストリテイリングは今日も下げ止まらず3%下落と大幅安だ。

しかし、それは「部分と全体」というような議論だ。リスクもあり懸念もあるのは事実だが、「部分」的な懸念に過ぎない。例えば消費増税の影響。もちろん予断は禁物だが、過度に悲観するべきでもない。消費税増税の影響は限定的とする見方が一部のエコノミストの見解や世論調査などで示されている一方、3月の日銀短観では先行きのDIが悪化、企業経営者の慎重姿勢が浮かび上がった。見方が割れるのは仕方ない。そして経営者が慎重であることは、むしろ当たり前である。

前回97年4月の消費税率3%から5%への引き上げ時も、増税直前の97年3月短観で大企業製造業が8ポイント悪化、大企業非製造業が3ポイント悪化の予想だった。ところが増税後の6月調査では大企業非製造業は予想よりもDIが悪化した一方で、大企業製造業は逆にDIが改善したという経緯もある。増税前は先行きに対する不安が高まるのは当然だが、過度に慎重になってしまうという面も否定できない。

実際のところはどうなのか。消費税が上がってからまだ半月も経たないので、ちゃんとした調査結果は得にくい。しかし、少しでも早く、実態を知りたいというのがマーケットの本音である。そこで俄然、注目を集めるようになった指標がある。東大の渡辺努教授らが開発した東大日次物価指数だ。これは日本全国の約300店舗で販売される食料品や日用雑貨などのデータを販売時点情報管理(POS)システムを通じて収集し、3日後に物価指数として公表するものだ。
ブルームバーグ・ニュースは、この指数がきっかけでエコノミストらが4月の物価上昇率の上振れを意識するようになったと伝えた。記事によれば、8日までの1週間平均は前年比1.0%上昇。3月の平均は前年同月比0.6%低下だったので、消費増税後は増税前に比べて差し引き1.5ポイント程度上昇したことになる。同指数は消費税を除くベースで算出しているため、増税分以上の値上げ、いわゆる便乗値上げが進んでいる可能性を示唆しているという。

便乗値上げかどうかはともかく、増税前には値下がりした物価が、増税後は(増税分を除いて)値上がりしているという事実だけを見れば、消費は案外、底堅いと言えるだろう。

俯瞰した図

次は新興国経済の減速。しかし、それはいつから懸念されるようになったのか?昨日、今日の話ではない。ずっと以前から「新興国経済の減速」はコンセンサス。であるならば、アナリスト予想には「新興国経済の減速」は所与の要件として織り込まれているはず。ここにきて、それを材料に下方修正などあり得ない。さらに言えば、米国や欧州の景気回復シナリオの蓋然性が高まり、先進国主導で世界景気は堅調との見方も広がっている。少なくとも「新興国経済の減速」を相殺して余りあると思われる。

そしてファーストリテイリングの減益予想。2014年8月期通期の純利益見通しを従来の微増予想から一転して減益予想に下方修正した。傘下のユニクロは今後2〜3年かけて1万6000人のパートらを正社員にする計画で、中期的な人件費負担が増える一方、値引き販売が利益を圧迫していることが嫌気され、朝から売りが止まらない。一時は4.7%安まで下げた。先日の10%を超える下げで空売り規制がかかっているから、今日の下げは機関投資家等の実需の売りによるものだろう。英国キャス・キッドソンの買収提案で交渉というニュースが流れたが、それも逆に買収負担増と買収が成功するかどうかの不透明感で売り材料視された感がある。

しかし、インフレ転換後をにらんで人員を確保するのは中長期の企業戦略としては評価できる。人口が減る日本においては労働力不足が経済成長のボトルネックとなるリスクだってある。実際に建設現場などでは既に人手不足が起きて工事が進捗しないという問題が起きている。

キャス・キッドソンの買収提案にしても将来の成長戦略、海外戦略への布石であろう。こういう地合いでなければ好意的に受け止められていたかもしれない。

そしてファストリのケースは小売りのなかのひとつの事例に過ぎない。ファストリと対照的なのが良品計画。10日の大引け後に発表した2014年2月期決算は、純利益が前期比56%増の170億円と2期連続で過去最高を更新し、年間配当も155円と前期(110円)から大幅に引き上げた。衣料品や食品などの売り上げが好調だったほか、アジアや欧州を中心に海外事業も伸びた。15年2月期は最終損益が154億円と約10%減少する見込みだが、減少率はQUICKコンセンサスの約14%減より小幅にとどまる。年間配当も175円と前期比20円増やす計画とあって、ファストリと同じ減益予想にもかかわらず良品計画は買われた。先週末、日経平均が1万4000円を割った全面安のなか、良品計画は逆行高となり11%の急騰を演じたのである。

そもそも、消費増税後の買い控えが懸念される中でも、主要小売業の7割が今期(2015年2月期)に増収増益を見込んでいると先日の日経新聞が報じている。好調なコンビニエンスストアを中心に、経常利益が過去最高になる企業も3割にのぼると記事は伝えている。但し、もちろん業態や企業によって状況はまちまちだ。優勝劣敗が明らかになるだろう。ファストリは、そんななかの一例に過ぎない。しかも、現段階においては、という条件付きである。

以上が、「部分と全体」という意味だ。消費増税、新興国景気、ファストリ業績。いずれもリスクであり懸念されるところであるが、俯瞰した視点でもっと大きく全体を眺めれば、それらはあくまで「一部」の不安であることがわかるだろう。少し回り道した感もあるが、ロイター記事の「減益シナリオ」というのは過度な不安である。よって、結論はバリュエーション面での割安性は正当性があり、それが株価の自律反発につながる。すでにその兆候が散見されている。
葉桜の頃

昨日、広島で開催したマネックス全国投資セミナーで、当社のチーフ・エコノミスト、村上尚己との最後の共演を終えた。日本を代表する稀代のエコノミストと一緒に仕事ができたのは非常に幸運なことである。入社以来、彼と机を並べて切磋琢磨してきた日々は僕にとって貴重な財産だと思っている。

何もできないが、せめてはなむけに、歌を贈ろう。例によって歌詞を記載することができないのでウェブサイト等で閲覧してほしい。

AKB48の『前しか向かねえ』と、きゃりーぱみゅぱみゅの『ゆめのはじまりんりん』である。

どちらも新たなチャレンジに向けた旅立にふさわしい曲である。

4月も半ばだというのに東京は気温の低い日が続いている。それもあって、桜はまだ一部に花を残している。季節も花も、移ろいゆくのを惜しむかのようだ。けれど、いつか季節は変わり、花もすべて散る。名残は惜しいが、村上さんの旅立ちを祝してエールを送ろう。前しか向くな。君の新しい夢のはじまりんりんなのだから。

僕はこれから毎年、葉桜の頃になるたびに、君と過ごした日々を思い出すだろう。ありがとう、村上さん。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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