国内の携帯端末メーカーの淘汰・再編は、もはや避けられまい。

 国内市場3589万台(2008年度。MM総研調べ)は、世界全体の3%にすぎない。しかも独自方式で高度化し、世界から取り残された“ガラパゴス諸島”だ。海外進出に失敗した国内メーカーのシェアはジリ貧ながら、京セラによる三洋電機の事業買収、三菱電機の撤退以降、08年に目立った再編の動きはなかった。

 だが水面下で、下位メーカーへの撤退圧力は高まっている。カシオ日立モバイルコミュニケーションズが一部NECへの生産委託を始め、東芝も国内自社生産から海外製造受託メーカーに切り替えると発表した。

 背景には、販売制度変更による店頭価格上昇と、景気低迷による需要急減がある。6年ぶりに1ケタ成長となった世界市場(11.8億台。08年、IDC調べ)以上に、08年度の国内市場は大きく落ち込み、前年比約3割減となった。東芝は販売台数が半減し、わずか300万台に終わった。

 端末の製造において、水平分業化という大きな構造変化が進んでいる。国内メーカーはそれを巻き返しのチャンスととらえていたはずだった。OSやミドルウエア、ユーザーインターフェース、ウェブブラウザなどを標準搭載したオープンなプラットフォームの登場で、開発コストが引き下げられるうえ、世界全体を市場とすることも不可能ではなくなるからだ。

 通信事業者が独占していたコンテンツ提供サービスも外部に開放される。その結果、国内メーカーが高機能化で先行して培ってきた技術や、コンテンツ提供も含めた製品コンセプトの魅力を発揮できると考えたのだ。

 また昨年中国展開を始めたシャープに加え、富士通やNEC、パナソニックモバイルコミュニケーションズ(PMC)も、10年頃に世界共通で整備される次世代通信網LTEの計画に合わせ、世界市場への本格再進出を狙っている。

 だが、問題はそこまでジリ貧の事業を抱え続けられるか、である。収益を開示している国内2位のPMCで今期の売上高営業利益率をわずか1.3%、NECで4.4%と見込む。赤字の企業も散見され、10%以上(デバイス&サービス部門)を稼ぐノキアに遠く及ばない。

 世界を見渡せば、4位モトローラ、5位ソニー・エリクソンも08年は最終赤字に沈み、事業存続の瀬戸際にある。急伸する中国・華為技術も一時、端末事業の売却を模索した。だが国内各社に海外事業を買収する資金余力はない。そこで、国内勢同士で当面の再編・協業を検討し始めたのだ。

 09年の国内市場はいっそうの冷え込みが予想される。撤退を余儀なくされるメーカーも、当然現れるだろう。


(『週刊ダイヤモンド』編集部  柴田むつみ)