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新たな冷戦の引き金として懸念されるウクライナ問題
国内では「オルガリヒ」に対する期待と憎悪が交錯

仲野博文 [ジャーナリスト]
2014年4月18日
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ドネツク州クラマトルスクに展開するウクライナ軍の落下傘部隊。地元のロシア系住民に取り囲まれている 
Photo by Konstantin Chernichkin

ロシアのプーチン大統領は先月18日、クリミア自治共和国を併合するための条約に署名した。同月24日にはウクライナのトゥルチノフ大統領代行が議会でウクライナ軍のクリミアからの撤退を発表し、ロシアのクリミア併合は名実ともに完了した。署名からちょうど1ヵ月が経過した現在、ウクライナ国内の親ロシア派住民による独立運動はウクライナ東部に飛び火。東部の各都市では親ロシア派の武装集団による警察署や市庁舎の占拠が続発している。ウクライナ政府も武装集団の排除と治安回復のために武力行使で臨む姿勢を表明。すでに死傷者も報告されているなか、ウクライナ東部をめぐる情勢は今後どのような展開を迎えるのか。

クローズアップされるオルガリヒ(新興財閥)の存在と
来月の大統領選挙

 ウクライナ東部の各都市で発生した騒乱は、当初はウクライナ暫定政府によるロシア色の薄い政策に反対する、親ロシア派による住民蜂起と考えられていたが、迷彩服に身を包み、マスクなどで顔を隠した武装集団が登場したことで、ロシアが事実上の軍事介入を行ったクリミアを連想させる光景を見せ始めている。

 ウクライナを経済的に支配するオルガリヒ(新興財閥)の面々に、東部出身者が多いのはよく知られた話だ。クリミアで住民投票が行われた頃、筆者が話を聞いたキエフや西部のリヴィウ在住のウクライナ人は、皆「クリミアのような騒乱が東部で起こるとは考えにくい。騒乱や衝突によって経済に影響が出た場合、オルガリヒにも火の粉が降りかかるからだ」と語っていた。

 しかし、市民間の衝突はすでに発生し、死傷者もすでに報告されている。2つ前のDOL特別レポートでは、キエフ在住の会社員イローナ・ポステムスカさんの「東部へのロシア軍の介入はないだろう」というコメントを紹介したが、騒乱はむしろ拡大傾向にある。現状に驚きを隠せないポステムスカさんは、騒乱の拡大と縮小はある意味でオルガリヒの行動にかかっていると断言する。

 「ウクライナのオルガリヒに東部出身者が多いのは事実です。昔から工業都市が多いため、ソ連崩壊後にビジネスを成功させ、新興財閥を作り上げた東部出身者は少なくありません。しかし、オルガリヒには様々な立ち位置や、政治的信条、民族的なバックグラウンドも存在します。ロシア政府との付き合い方や、ウクライナからの独立を求める親ロシア派住民への接し方をみても、それぞれスタンスが異なります。

 たとえば、ドニプロペトロウシク州ではユダヤ人社会の中でリーダー的な存在として活躍していた実業家のイゴール・コロモイスキー氏が新知事に就任しましたが、彼は地域の安定化を政策の最重要課題に位置づけ、資金難から弱体化が指摘されていた地元のウクライナ軍部隊に対し、ポケットマネーで財政支援を行っています。産業の中心である東ウクライナの騒乱がやがて国の経済を悪化させてしまうことは一目瞭然。最初に地域の安定化に努めた彼の支持姿勢は評価できますし、この地域では実際に大きな衝突も発生していません」

 ポステムスカさんは続ける。

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仲野博文 [ジャーナリスト]

甲南大学卒業、米エマーソン大学でジャーナリズムの修士号を取得。ワシントンDCで日本の報道機関に勤務後、フリーに転身。2007年冬まで、日本のメディアに向けてアメリカの様々な情報を発信する。08年より東京を拠点にジャーナリストとしての活動を開始。アメリカや西ヨーロッパの軍事・犯罪・人種問題を得意とする。ツイッター:twitter.com/hirofuminakano

 


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