変わり続ける外部環境と、変わることを拒む組織。企業には終わりなき変革が求められるのに、人々は半世紀前も今も同じ理由で変化に抵抗しているという。その壁に直面するリーダーに、テイラーが変革の5原則を示す。


 20年前、私がアラン・ウェバーと立ち上げた『ファストカンパニー』の創刊号の巻頭記事は、愉快で気の利いたリストだった。タイトルは、「私たちが変われない50の理由」。ミルウォーキー・ギア・カンパニーという老舗の部品メーカーの製品マネジャー、E・F・ボリッシュが、本当の進歩を阻む不安や抵抗を列挙した秀逸なリストだ。たとえば、こんな具合だ。

 理由1:「1度もやったことがないから」
 理由4:「前にやったことがあるから」
 理由13:「競合がやっていないから」
 理由17:「営業が無理だと言うから」
 理由18:「サービス部門が嫌がるから」
 理由45:「いまのままで十分だから」
 理由50:「不可能だから」

 興味深いのは、ボリッシュがこのリストを作成したのは1959年であることだ。彼はこれを『プロダクト・エンジニアリング』というあまり知られていない雑誌で発表した。我々が1993年に再掲載した時にびっくりしたのは(そして20年後の現在もその驚きは変わらないのだが)、ほとんどの企業とリーダーが、現在もまったく同じような不安や抵抗に直面しているという点だ。

 物事がどんどん変化しているというのに、変化や変革を阻むものは変わらないように見える。

 だとしたら、ファストカンパニーの創刊から20年の間に、あるいはボリッシュがリストを作成してから54年の間に、私たちは何を学んだのだろう? ここで、変革を起こすための5つの単純な原則を提案したい。

1.ほとんどの業界のほとんどの企業が、一種の視野狭窄に苦しみ、そのせいで明るい展望を描けなくなっている。したがって変革の第1の原則は、独自性だ。リーダーは自社やその問題を、過去と切り離して新たな目で見つめる必要がある。そして問題の解決方法について明確な視点を持たなくてはならない。特に老舗企業では、専門知識がイノベーションの邪魔をしがちだ。

 私の知るきわめて有能なリーダーたちが、「ベンチマーキング」の大ファンではないのはそれが理由だ。ベンチマーキングは変革を促すためによく用いられるが、視野狭窄の問題を悪化させてしまう場合が多い。業界の「超一流」から学ぶことは――特にその企業が、現実にはそれほど優れていないとしたら――実際にどれほど意味があるだろうか。ならば、大改革によってライバルから抜きん出る手段を、業界の外にいるイノベーター企業から学ぶほうがよい。