ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭

「職業倫理」を育むのも失うのも「組織」次第。
STAP問題、入学式欠席騒動、客船転覆事故に
共通すること

竹井善昭 [ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表]
【第110回】 2014年4月22日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 韓国客船の転覆事故。船長が乗客を放り出して真っ先に逃げ出すという、前代未聞の行動に大きな批判が集まっているが、この件には個人的にも衝撃を受けている。というのも、僕の父親が船乗りだったからだ。父は戦前、海軍に所属して軍艦に乗っていた。そして戦後は海上保安庁に勤務。退官するまで船長としてずっと船に乗っていたのだ。

父の後ろ姿を見て感じていた
船乗りの「職業倫理」

 だから、わが家では日常の家族の会話のなかでも自然と、船乗りの矜持に関する話題が話されていた。「戦艦や空母の船長というものは、船が撃沈されたときは、船と運命を共にするものだ」というような話が、それこそ空気のように語られていた。さすがに海上保安庁では、沈没する保安船とともに船長も殉じるというわけではなかったが、それでも職務上、命をかけることは当たりまえのことである。

 戦前生まれの男性らしく、僕の父親も無口なほうだったので、そのようなことを夕食のときなどに声高に語っていたわけではない。しかし、台風が来る度に、当たりまえのように船に乗りに行く父親の背中をみていれば、幼い子どもでも海上保安官の「職業倫理」とはどのようなものか、理解はできるものである。

 僕が幼い頃の日本は、室戸台風や伊勢湾台風の甚大な被害の記憶がまだ生々しく残っていたし、台風が来る度に家々は雨戸に板を打ち付けたり、バケツや風呂に水を貯めたりして、台風上陸に対する備えに町中が慌ただしかった。当然、漁船などの民間の船は港に避難してくる。そのような空気感のなかで、自分の父親は当たりまえの顔をして船に乗りに行く。そして、遭難船が出れば、嵐の海のなかを突っ込んで行く。

 当時、幼稚園児だった僕も、台風が接近してくる度に船に向かう父親の後ろ姿を見ながら、「これでもう、父親が死んでしまってもしょうがない。そういう仕事なのだ」と感じていた。これは海上保安庁の人間だけでなく、自衛隊や警察、消防署など常に殉職の危険をともなう仕事をしている人間の家族なら、誰もが共通して持つ感覚ではないかと思う。

 もちろん、家族が殉職してうれしい人間などいない。当然だが僕だって、できれば嵐の海に出港するような船に父親が乗るようなことはやめてほしかった。しかし、だからと言って、父親に対して「行かないでくれ」と乞うようなことはできなかった。父親の気持ちを怯ませるような言動はすべきではない。幼い子どもでもそれくらいのことは理解していた。つまり、本人だけでなく、家族もまた覚悟を決めているのだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

竹井善昭 [ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表]

マーケティング・コンサルタントとしてクルマ、家電、パソコン、飲料、食品などあらゆる業種のトップ企業にて商品開発、業態開発を行なう。近年は領域を社会貢献に特化し、CSRコンサルタント、社会貢献ビジネスの開発プランナーとして活動。多くの企業にてCSR戦略、NGOのコミュニケーション戦略の構築を行なう。「日本を社会貢献でメシが食える社会にする」ことがミッションに、全国各地で講演活動を行なう。ソーシャル系ビジネスコンテストや各種財団の助成金などの審査員多数。また、「日本の女子力が世界を変える」をテーマに、世界の女性、少女をエンパワーメントするための団体「ガール・パワー(一般社団法人日本女子力推進事業団)」を、夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美氏、日本キッズコーチング協会理事長の竹内エリカ氏らと共に設立。著書に『社会貢献でメシを食う。』『ジャパニーズスピリッツの開国力』(いずれもダイヤモンド社)がある。

株式会社ソーシャルプランニング
☆竹井氏ブログ 社会貢献でメシを食う〝REAL(リアル)〟
☆Twitterアカウント:takeiyoshiaki


社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭

CSRやコーズマーケティングをはじめ、「社会貢献」というテーマがポピュラーとなったいま、「社会貢献のセカンドウェーブ」が来ている。新たなサービスやプロジェクトのみならず、新たな主役たちも登場し始めた。当連載では話題の事例を取り上げながら、社会貢献的視点で世の中のトレンドを紹介していく。
*当連載は、人気連載『社会貢献を買う人たち』のリニューアル版として、2014年1月より連載名を変更しました。

「社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭」

⇒バックナンバー一覧