まず、歴史を見ていく。1972年のIBMを皮切りに、1974年のインテル、1990年代に入ると、マイクロソフト、シスコシステム、ヒューレッド・パッカードなどがR&D拠点を次々に開設。2000年以降も、サムスン、オラクル、グーグル、アップル、フェイスブックも企業買収などを通じてR&D拠点を開設。こうした企業のR&D拠点が多数あることは、何をもたらすか。

 一般的に、こうしたテクノロジー企業では、収益を上げるため、他社の研究・開発に先行、差別化し、日々イノベーティブな発想、技術を自社の製品の開発に取り込んでいく必要がある。イスラエル生まれの技術は、今回あげた技術以外にも、点滴灌漑、カプセル型内視鏡など定評がある。こうした新しいアイデアが生まれてくる人材が多い土地ということであれば、当然、R&Dの拠点を構えておくというのは、「ごく普通」の選択肢であろう。

 過去、本連載第3回の本藤氏の発言、「『なぜイスラエル企業に投資するのか』と聞かれるが、イスラエルに投資するのは当たり前のことでむしろ、『なぜイスラエル企業に投資しないのか』と聞きたい」の通り、世界の常識からすると、「なぜ、イスラエルなのか?」は愚問で、間違いなく「なぜ、イスラエルへ進出しないのか?」と反対に質問が返ってくるだろう。現在、イスラエルにあるグローバルなテクノロジー企業のR&D拠点は、200社300拠点、5万人程度が働いているとされる実績が物語る通りである。

 こうした企業では、研究・開発のための資金を十分に確保、一部の企業ではコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)の機能も持たせ、必要に応じ、そうした技術を持ったスタートアップを買収する。さらに、グーグル、マイクロソフトなどの企業は、起業家支援も行い、イスラエルの「頭脳」「発明」を積極的に取り込んでいる。