韓国で、むごたらしい海難事故が起きた。

 現在、わかっているだけで死者は一七〇人を超え、一三一人近くもの乗客が行方不明のままだ。にもかかわらず、一五人の乗組員は全員が無事で、さらに驚くべきは、船長が我先に船を捨て、脱出を図ったことだった。そのうえ、救助された際には一般客を装っていた。

 おそらく、この船長はキャプテンジャック・スパロウを尊敬しているのだろう。

 海の怪物クラーケンにパール号が襲われたとき、ジャック・スパロウも仲間を見捨て船も捨てた。自分だけ逃げ出したんですね。コンパスが大切なものを示したから、思い直して船に戻るんだけど。よくわからないという方は映画をご覧ください。シリーズ第二作です。

 事故の原因が少しずつわかるにつれ、運行会社のずさんな管理体制も浮き彫りになった。事故を起こした旅客船は、日本の運行会社から売られたものだが、譲渡後に船は三階部分に客室が増築された。

 そのために重心が高くなり、ただでさえ不安定なうえに許容積載量の三倍もの貨物コンテナ等々を積載し、船の安定させるバラスト水を抜いていたとの報道もあった。おまけに、鎖で固定すべきコンテナをロープで縛りつけていただけだった。

 そんな状況で急旋回を試みれば、固定しきれていないコンテナが左舷に大きくスライドし、横転転覆するのは自明の理だ――、と専門家は言う。事故が起きるときには、起こるべく理由があるとはいえ、行方不明者の大半が修学旅行中の高校生だったのはいたたまれない。

 ずさんな管理が、未来ある若者の将来と、可能性と、命を奪ったのだ。

 乗客の救助を優先し、自らは逃げ遅れ亡くなった女子大生(運行会社の非正規職員)もいれば、救助船に乗り込む際、甲板で泣いている五歳の少女を見つけ救助に走った高校生の人命救助が伝えられるなか、乗客の救助も二の次で逃げ出した船長や、遺族の横で式典用の椅子に座ってカップ麺を啜る教育部長官がいたり、現場で記念写真を撮ろうとした安全行政部の監査官がいたり、子どもたちが頑張っているのに、大人らは何をしているのだ、

 という無念さえ感じられる事故だった。