『週刊ダイヤモンド』5月3・10日合併号では、「年収1000万円の不幸」という特集を組んだ。ここでは特集関連のスペシャルコンテンツとして、『年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ち』の著者、伊藤邦生氏へのインタビューを掲載する。国内大手証券会社を経て資産コンサルティング会社を起業し多くの富裕層に接する伊藤氏に年収1000万円層でもお金持ちではない理由を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 清水量介)

年収は上がらないのに
“ちょっといいもの”を買ってしまう

『年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ち』<br />著者が明かす高年収層の実像<br />――伊藤邦生・ゴールドスワンキャピタル社長いとう・くにお
1976年生まれ。京都大学大学院卒業後、国内大手証券会社に11年勤務。日本国際、ジャンク債、外債、債権デリバティブなどのトレーディング業務を経験し、その後、不動産の私募ファンドの組成なども担当。2011年資産コンサルティング会社ゴールドスワンキャピタル設立。

――本を書いたきっかけについて教えてください。

 私は日本の大手証券会社で長く働いてきました。その時に感じたのは「年収とその人の経済的豊かさは関係がない」ということです。

 ロジャー・ハミルトンという人の著作『億万長者 富の法則』のなかに「今日から働かなくなったら、どれくらい生活ができるか。それが長いほど豊かだ」という趣旨の一節があります。

 例えば、1億円の貯金があっても、1年に1億円使ってしまう人と、1000万円しか持っていなくても、1年に200万円しか使わない人なら、後者のほうが豊かだということになるわけです。

 当時、私が勤めていた証券会社の先輩に、1000万円以上稼いでいても、消費者金融からお金を借りている人がいました。給料日の昼休みに、私の目の前で携帯電話で返済の話をしていました。

 また、証券業界には伝説的なディーラーがいましたが、私が知る方は年収十億円も稼いでいるけれども、借金で首が回らないとも噂されていました。