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東京理科大学専門職大学院イノベーションレビュー

世界覇権をめぐる特許訴訟の衝撃

2014年5月29日
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特許適格性に対する
最近のドイツ最高裁判断

 先にアメリカの特許制度を見たが、欧州の知財訴訟はどのような状況だろうか。ドイツ連邦最高裁判所のPeter Meier-Beck判事によれば、近年、「特許の適格性」に関わる2つの重要な判決が出たという。

ドイツ連邦最高裁判所
民事第10部 部総括判事
Peter Meier-Beck判事

 1つは、2012年12月に出されたソフトウエア特許に関する最高裁判決で、カーナビゲーションの走行ルート選択に関わる技術の特許適格性が問題となった。目的地を入力してカーナビがいくつかのルートを提示した場合、ユーザーの好みや条件に合わせてルートを選べるようにした技術に特許適格性があるかどうかが争われた。

 判決は、ユーザーが目的地のほかに経由地などの条件を入力して走行ルートを選べる点について、それだけでは発明性に乏しく、特許の適格性を満たさないと判断した。発明とは、特定の技術的な課題を、新たな特定の技術的手段によって解決できることを指し、それこそが特許の適格性であると定義できる。本カーナビの技術は新規の利便性を提供するものではあるが、これを実現する技術的手段は自明で進歩性のないものと判断された。この判断は、EPO(欧州特許庁)の見解とも合致している。

 もう1つは、Meier-Beck氏としても今回初めて一般聴衆に紹介する、医薬品の投与手法についての特許適格性をめぐる最近の判決だ。デュピュイトラン病の患者に対してコラゲナーゼという薬剤を投与する場合、病変している手の線維索に一定濃度以上の薬剤を一定量以上注入し、その後数時間静かに固定しておくという治療法が、特許となるかどうかが争われた。

 一審の連邦特許裁判所は、そもそも手を固定して静止させるという部分は治療上の指示であって、発明の進歩性の評価には勘案されないとした上で、コラゲナーゼを特定の治療目的のために投薬量を増やして使用するという方法は専門家にとっては自明であるので、発明性は認められないとした。

 これに対してMeier-Beck氏の連邦最高裁判所は、「治療方法に関わる指示であっても、薬剤の効果とは関係のない単なる治療上の指示ではなく、それが客観的に薬剤の効果を発生させ、増強させ、促進させることを狙ったものである場合には、特許を認める理由になりうる」と判断し、連邦特許裁判所へ審理を差し戻した。

 

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いかにして技術から新しい価値を生み出すのか。また、その成果をいかに正当に確保し、配分するのか。東京理科大学専門職大学院のMOT(技術経営専攻)とMIP(知的財産戦略専攻)には、教員・院生を問わず多様な人材が集い、現実の課題に基づく視点から、イノベーションを実現するための叡智が日々蓄積されている。

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