従業員1人当たり295時間の工数時間の削減

 前ページの活動実績を見て、読者の皆さんは、どのように感じられただろうか。

 第1期組、2期組とも、まだ自立的な活動期には入っていない、いわばまだ革新運動の手法を学んでいる途中での実績である。しかし、有効工数の削減時間は合計で6万7500時間に達し、総工数に対する割合は18.4%だ。革新運動の参加者1人当たりでは有効工数で225時間、改善提案件数では54件になる。そして第1期組、第2期組共に、1人当たり40件を超える改善提案が実施された。

 これらの実績を基に、2014年8月末での2年間の活動実績を見込んだものが次の表である。「第3期」とあるのは、先の7部門に、2013年秋からさらに3つの事業部門や人事総務、経理、経営企画などの9部門が加わり「第3期組」となり、全16部門での革新運動が始まったことを意味している。この9部門も、改革手法の基本を学ぶところから始まっている。この段階での革新運動への参加者は総計600人で、全従業員の75%になる。

 
 この見込み表は、第3期組の活動が始まった時点のものなので、第3期組の実績はゼロで、見込み数字だけとなっている。だが、それにしてもである。

 有効工数の削減は、総計で17万7200時間に達し、削減率は28%、改善提案件数は4万2600件にも上る。革新運動への参加者1人当たり有効工数の削減時間は、295時間に増え、削減時間はさらに増える勢いをはっきりと示している。そもそも、800人ほどの会社で、2年間足らずの革新運動で4万2600件も改善点が提案されていること自体が、驚異的と言わざるを得ないだろう。

 言葉を換えれば、これまでの業務遂行に、いかにムダやムラが多く、改善点が放置されていたかを意味している。1人当たり295時間の工数時間の削減も、見方を変えれば、それだけの「余裕時間」を得たことを意味している。1日8時間労働として約36日分である。1カ月以上に相当する勤務時間が“創造”されたのであるから、当然コストは削減され、創造された時間を研究・開発や販売促進、さらなる生産改革の検討などに振り向けていくことができる。

 ちなみに私たちのこれまでのコンサルティング例でも、改革があるレベルまでに達した会社には、「余裕率」が生まれ、その大切さを認識した動きが出始める。例えば余裕率が10%であるとすれば、1日8時間勤務で48分が、従業員が自由な課題に取り組める時間となるのである。なぜ、これほどの劇的な改革が可能になるのだろうか。

 次に、改革のための基礎的な考え方を紹介してみよう。