いつかは自分の「机」を持ちたい
たたき上げ工員たちの夢

 岡田に案内されて事務所を出たところで、渋谷が沢井と藤村に言った。

「引き継ぎのとき詳細に話しますが、この会社は管理職が多いのです。

 昔から60歳定年だったこと、若い人の嫌がる仕事で採用がなかなかできないこと、したがって、平均年齢が44歳と高いこと、年功人事体系で押せ押せになっていることなどが背景になっているところに、現場で働いている作業員の多くが、定年までに事務所にデスクを持つエライさんになりたいという願望を持っているんですな。

 その願望をかなえて、管理職にどんどんしているんですよ。それに管理職にすれば、残業手当を出さないで済みますからな」

 なるほど、ホンネは残業手当か、と沢井は感じた。
 しかしベテランの作業者を直接生産工程から引き上げては、残業手当の節約よりはるかに大きな損失になっているのではないか。そんな考えが沢井の頭を走った。(第5回につづく)


<書籍のご案内>

【プロローグから第1章までを公開!(4)】<br />「いつかは自分の机を持ちたい」<br />たたき上げ工員たちの夢

『黒字化せよ! 出向社長最後の勝負』

実話をもとにした迫真のストーリー!
人が燃え組織が燃える! マネジメントの記録

■ストーリー■
大企業で役員目前だった沢井は、ある日突然、出向を言い渡される。出向先は万年赤字の問題子会社。辞令にショックを受けつつも、1年以内に黒字化することを決意した沢井だが、状況は想像以上に悪かった。やる気のない社員、乱雑で老朽化の進む職場…。しかし、新しく人を雇ったり設備投資をするような予算はな い。今ある人材、今ある設備で黒字化できるのか。(本書は、『黒字浮上! 最終指令』〈小社刊・1991年〉を改題・改訂したものです)

【目次】
♦プロローグ  出向内示 ──黒字化せよ、さもなくば清算だ
♦第1章 赴任【7月】 ──あきらめきった無気力な社員たち
♦第2章 「オレがやる、協力する、明るくする」【8月】 ──改革が始まる
♦第3章 本音のコミュニケーションとストローク【9月】 ──社員の士気を高める方法
♦第4章 会社は社員とその家族の幸せのためにある【10月】 ──沢井社長の経営哲学
♦第5章 がむしゃらに頑張って何トンできる?【11月】 ──瞬間最大風速をつかめ!
♦第6章 赤字の正体【12月】 ──絶望の先に答えがある
♦第7章 新しい年、新しい社章【1月】 ──三か年計画の発表
♦第8章 ベテラン社員、ついに動く【2月】 ──組織が生まれ変わるとき
♦第9章 月産200トン体制に向けて【3月】 ──人が燃え、組織が動く
♦第10章 黒字浮上【4月】 ──人はみな能力を秘めている
♦エピローグ 黒字達成までをふり返る ──同時並行多面作戦の展開

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