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企業小説 黒字化せよ! 出向社長最後の勝負
【第6回】 2014年5月14日
著者・コラム紹介バックナンバー
猿谷雅治

【プロローグから第1章までを公開!(6)】
浮かび上がってきた
ひとつの課題と3つの施策

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万年赤字会社はなぜ10ヵ月で生まれ変わったのか? 実話をもとにした迫真のストーリー 『黒字化せよ! 出向社長最後の勝負』の出版を記念して、プロローグと第1章を順次公開。社内を一通り見てまわった結果、一つの課題が浮かび上がってきた。沢井はまず、3つの施策をスタートさせる。(連載第1回目、第2回目、第3回目、第4回目、第5回目はこちら

この会社は社員を大切にしていない

 7月3日の朝、沢井は岡田と藤村を社長室に呼んだ。

 外は雨が降りしきっている。
 木造モルタルの古い事務所の、2階の南端にある社長室の窓は、風が吹きつけると窓ガラスと桟のすき間から雨水が内側ににじみ、流れ込んでくる。

 「この事務所も相当のものですな」

 言いながら、沢井は応接セットに腰を下ろした。
 かなり大きなテーブルを囲んだ応接セットで、7名がゆったりすわれる。
 この会社の最高意思決定と情報連絡を兼ねた部長会議と称する会合が、毎週金曜日に朝9時からこの場で行なわれている。
 沢井の向こう側の大きなソファの右に岡田、左に藤村がすわった。

 「なにしろ、昭和22年のこの会社創立以来の建物ですから。補修を重ねて何とかもたせてきているのです」

 まるで自分の責任であるかのように、岡田はそのがっしりした肩幅を縮めて言った。
 岡田は沢井よりやや背が低い。しかし色浅黒く、骨太で、半袖の作業服から出ている腕はみっしりと固い肉がついていた。

 半白の固い髪が豊かで、その下の太い眉、大きな鼻と口、がっちりと四角く張ったアゴ──長年現場で苦労を積み上げてきた男であった。

 「昨日、渋谷さんと引き継ぎをしていて驚いたんだ。私が何気なくデスクの上に置いた鉛筆が、コロコロころがっていくんだ。軸の丸い赤鉛筆だったがね。床が相当傾いているようだね」

 「総務部の私のデスクも同じですよ。よく倒れないで立っていますな、この事務所」

 藤村の色白の細長い顔が苦笑している。

 「ところで、お二人に来ていただいたのは、いろいろお話したいことがあるのです」

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猿谷雅治 

 

さるや・まさはる。1952年東京大学経済学部卒業。住友金属鉱山(株)入社。経理、人事、組織、社長室のほか、事業部総務部長、関係会社出向などを経て1981年取締役就任。1984年常務取締役企画管理本部長。1993年富士短期大学教授。1996年富士短期大学副学長を経て富士短期大学経営研究所教授。1998年没。1964年、「目標による管理」を導入、実施して会社の業績向上に大いに寄与。人間を尊重する目標による管理の思想を中軸として、新しい経営管理論、組織論、リーダーシップ論などの実務への展開に力を注ぐ。主要著書に『目標設定による管理体制』『目標管理の要点』『目標管理の考え方』『創造的リーダーシップ』『仕事と目標と生きがい』などがある。

 


企業小説 黒字化せよ! 出向社長最後の勝負

実話をもとにした迫真の企業再生ストーリー。大会社で役員目前だった沢井は、ある日突然、万年赤字子会社への出向を命じられる。辞令にショックを受けつつも、沢井は1年以内に黒字化することを決意。しかし、新しく人を雇ったり機械や設備を導入する予算はない。今ある人材、設備で黒字化するには社員の意識を変えるよりほかにない。そこで沢井が講じた施策とは…?プロローグと第1章を公開。

「企業小説 黒字化せよ! 出向社長最後の勝負」

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